無重力世界への招待状



それでも自分の夢だから

「お前が宇宙飛行士になるのを、サポートする。んで宇宙飛行士になったら、その活躍を、なるべく近い場所で見られるような、そんな仕事が俺の夢、だ」

言ってみて、やはり恥ずかしくなった俺は、留三郎から顔を逸らした。
留三郎は、俺の言葉をなかなか飲み込めていないらしく、数分ほど暫く固まっていたが、意味を理解したのか、

「はぁぁ!?」

と声をあげた。

「文次郎!!おい、文次郎コッチ向け!!」

留三郎が俺の頭をガシッと掴んで、自分の方に俺の頭を向けようとするが、俺は頑なに留三郎から顔を反らそうと必死に抵抗した。

「このやろっ」
「誰が向くかぁぁぁ!!」

グググッと二人で暫く攻防戦を続けたが、暫くして諦めた留三郎は、バッと俺の頭を離すと、どこか、苦しそうな声を出した。


「お前、そんなんで良いのか!?俺に一生付き合うって言ってるようなもんだぞ!?」
「あぁ」

分かってるよ、その覚悟があるから今言ったんじゃねぇか、お前の傍にいられなくなる未来があると思ったから、今…。

「付き合う、一生かけて付き合ってやる」
「でも!!それはお前の夢じゃねぇだろ!!」

俺は先程まで向くのを頑なに嫌がっていた留三郎の方をまっすぐ見つめた。

「違げぇよ」

宇宙飛行士はお前の夢だ。俺も、これは自分の夢なんかじゃねぇと思うこともある。
でもさ、違うんだよ、俺がお前の傍でお前の夢が叶うのを見てみたいと思うのは、俺の…

「俺の夢だからだ」
「っ」

俺の目を見て、留三郎はグッと息を呑んだ。

「俺が宇宙飛行士やめるって言ったらどうすんだよ!!」
「そりゃねぇだろ」
「は?」

それは無い。と俺は断言出来る。

「最初の努力を、お前は怠ってねぇじゃねぇか」
「…」

そうだろ?お前は努力を怠らなかった。あの日から、必死に。
それに…

「お前は、俺に宇宙飛行士になりてぇって言ったとき、嘘言ったのか?」
「それは…っ」
「な?」

分かってるよ、はじめてお前の夢を聞いたあの日から、俺はずっとお前を見てきた。
お前は、嘘なんてつかない。

「なぁ、留三郎、俺はお前の夢に付き合いてぇんだよ、俺だって本気だからな」
「本当に、良いのかよ」
「あぁ」
「文次郎の夢が、俺なんかで良いのかよ」
「あぁ」
「ほんとに…」
「良いんだよ」

良いんだよ、初めてあったあの日から、俺の夢は、お前のもんだ。
俺がそう言うと、留三郎は、


泣きそうな顔を一瞬して、

でも

笑った。

それでも自分の夢だから

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