無重力世界への招待状



僕の夢、君の夢

俺は将来の夢なんて無い。いつもいつも、仙蔵を追いかけることばかりして来たから、自分の夢となると困る…。
けれど、はじめて留三郎の夢を聞いたときから、俺はずっと留三郎を応援して来たつもりだ。

俺に明確な夢がないからこそ、留三郎のその必死になって追いかけたい夢は、凄く価値のあるように思えた。

だから俺はいつしか、留三郎を『宇宙飛行士にしたい』というのが…夢になっていた。

留三郎の夢に賛同した形だが、俺は今、それが何故かとても充実しているから。
だから、留三郎の夢を邪魔する奴がいるなら、俺がアイツを守るって決めた。

「ありがとな」

そうやって、嬉しそうに笑うコイツがいれば、俺は満足だ。
コイツと喧嘩して、コイツと勉強して、そんな日々を送りながら、いつか広い宇宙に送り出してやりてぇ。
その為に俺は何が出来るだろう?

「何がだよ」

笑う留三郎に、俺も思わず笑ってしまう。掌を伸ばして撫でたその髪は、フワフワの猫毛だった。
突然頭を撫でられた留三郎は、驚いた顔をしたが、俺に大人しく頭を撫でられていた。

「お前はさ…」
「ん?」

柔らかい感触の髪をゆっくり撫でると、気持ちよさそうに笑うので、先程から緩んでいた俺の頬は、さらに緩んだ。

「夢とかねぇの?」
「…」

頭を撫でられていることで、どこか気恥ずかしそうな留三郎がそう口を開いて、俺は思わずその場で固まってしまった。

「え…俺の夢、かぁ…」

急に聞かれると、それは何だかとても恥ずかしいことのように思えた。
だって、大事な友人の夢に感化された。とか、ソイツの傍でソイツの夢が叶うのを見てみたいとか。それを本人の目の前で言うのは…。しかもそれは自分の将来の夢か、と言われると微妙なラインだ。

ふと、俺の頭の中に、留三郎が宇宙飛行士になるなら、俺はコイツの活躍を傍で見るために、一体どんな仕事が出来るんだろう。と言う考えが過ぎった。例えば、研究員になるとか、カメラマンになるとか、選択肢は沢山ある。

でも、だ。俺はその将来まで、コイツの傍にいれるだろうか、俺が勝手に傍にいたいと思っているだけで、留三郎が文次郎とはもう会えない。と一言でも言えば、俺の夢もそこで終わるのだ。

「…俺の夢は…」

そう思ったら、俺は酷く不安になった。
相手が少しでも拒絶すれば、叶わない俺の小さな夢。
でも、ここで言わなくてはいけない気がした。今約束しておかないと、将来絶対、離れ離れになりそうだったから…。

「お前の夢が叶うのを、傍で見ること…かな」
「え」

そんな俺の言葉に、留三郎はキョトンっとした顔をして俺を見た。

僕の夢、君の夢

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