無重力世界への招待状



僕が君に出来ること

その日から、俺たちは多少騒いでも大丈夫な日に、放課後の図書室で勉強する習慣が付き、俺も多少だがあいつに勉強を教えたりして、留三郎の成績は見る見るうちに良くなり、今では俺と学年二位を争うまでになった。

ただ、連日勉強を頑張り、学園で一番忙しいと言われる用具委員会所属のアイツは、ここ最近、疲れているらしく、授業中に爆睡してしまうことが多くなってしまったが…。

そんなある日、留三郎がポツリと呟いた。

「やっぱ、授業中に寝ちまうのって、良くねぇよな…でも俺、委員会は辞めたくねぇんだ」
「あ?」

いつもの図書室での勉強会で、留三郎が器用にペンをクルリと回す。
そんな留三郎に、俺は、気にしてるのか、と思った。

「気にするな」
「は?」

まぁ、そうなるだろう。とはコイツと勉強会をするようになってから、何となく予想はしていた。
だから、

「これを見ろ」
「え?」

そう言って俺が留三郎に見せたのは、一つの手帳と、USB

「これは、俺たちがどれだけ勉強したかまとめたものだ」
「は?」

実はこれを作るために、留三郎と勉強会をするときに俺から課題を出し、かつ、進行状況などもこまめに確認。そうして、また次の勉強会で課題を俺に提出してもらうという形式をとっていた。

「このプリントだけどな」

こうして提出された課題だが、最初こそ俺が出した課題だったが、さすがに俺は教師ではないので留三郎に与える課題に不安もあった。なので、俺が先生にプリントを頼んだ。最初こそ、あの食満がキチンと勉強するのか?と笑いながらプリントをくれた先生方だったが、じょじょに良くなっていく留三郎テストの点数関心し、今では、プリントの提供にとても協力的になってくれた。しかもそのプリントを留三郎もキチンと解いて持ってくるし、またテストの点数も上がる。先生は留三郎の成績が上がるたびに大喜びだった。

「実は先生が作ってくれたもんなんだよな」
「えぇぇぇ!!?」

一度も伝えてはいなかったので、留三郎は、図書室で盛大に叫んで、据わっていた机から立ち上がった。いくら図書室の番人・中在家長次のいない図書室といえど、そんな声を出せば、周囲の目線は一気に留三郎に移る訳で…。

「…っ」

留三郎はカァッと赤面すると、その場でシオシオと椅子に戻る。
そんな姿に俺は、怒られる前にフォローを入れる。

「先生はキチンとお前の努力を認めてるんだよ」
「っ」

まぁ、そうなるようにしたのは俺だけど、留三郎をバカにしてた教師が、俺と留三郎のテスト順位が並んだときのアホ面は今思い出しても笑える。

「もし、それでお前の授業態度が悪いってんなら、この手帳とUSBに入った、お前の勉強の進行状況を俺がこと細かく先生方に解説してやる」
「っ」
「それに、用具委員会の吉野先生は味方につけたし、他の先生もお前が常に忙しいのは理解してるからな」
「…文次郎」
「大丈夫だ、お前は今のお前のまんまで十分オッケーだ」

そうやって、俺はニッと笑って、留三郎の頭を撫でた。

僕が君に出来ること

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