一ノ瀬めさん1700hitリクエスト(文食(♀))

机越しの告白
※(現代パロ)


隣の席の…
食満留子(けまとめこ)は、変なヤツだと思う。それが俺、潮江文次郎の、個人的印象だ。

眼鏡掛けてて読書が好きで、所詮文化系に属しているくせに、好きな教科は体育で髪はショート、所属委員会は学校でも指折りに体力を使う用具委員会だ。

普段はどちらかと言うと大人しいくせに、予算会議ではこれでもかと暴言を吐く。
食満と俺は、委員会で数々の攻防戦を続けてきた為、ライバルのような関係を築いてきた。

変なヤツだが、側にいて面白い最高のライバル。そんなヤツを、俺は密かに…。

「好きだったりするわけで…」

人生ってのは何が起こるか分からないもんだと、俺はそう思う。現に、高校生活最後の三学期、隣同士になれたのは、もはや奇跡だろう。これが最後だ。告白のチャンスは近い。
昼時の授業で眠気がピークに達していて、ボーっと外を眺めながら出た独り言は、何故か俺の意中の人の耳に入ってしまったようで…。

「…潮江、好きな人いるの?」
「え…」
「…あ」

突然声をかけら、バッと隣を振り返ると、相変わらずメガネを掛けた食満が、興味深そうなな顔をしていた。
これは素直に言った方が良いんだろうか?

いまいち、答えが出せない俺に、食満は苦笑してもう一度聞いてきた。授業中なのであくまで小声だが。

「好きな人、いる?」

これはやはり答えた方が良いと思った俺は、食満の質問に答えることにした。

「…いる」

お前…だけど。

「へぇ」

俺の答えに、食満はニヤニヤしながら、俺を見る。
食満のそんな様子に、俺は少しイラッと来た。楽しそうな様子を見るに、食満は俺に脈が無いように思えるからだ。

「そういうお前はどうなんだよ」
「私?」
「おう」
「…いるよ」
「……へぇ」

ヤバい、今、グサッと来た。胸いてぇ…。俺はお前が好きだけど、お前が俺を好きになる可能性は本当に低いんだと分かってるけど…。

「うん、好きだな、好きだった…かも」
「はぁ?」

そう言って苦笑する食満の目は…先程までニヤついていた顔とは違って酷く悲しそうで、俺は思わず息を呑む。

「…誰が好きだったんだよ」

この状況で、そんなこと言われたら、俺は期待しても良いのか?
お前が俺を好きだと言ったら、俺もお前を好きだと言う。
俺がお前を好きだと言ったら…。

「俺は…高校一年の時から好きなヤツがいる」

…一体どうなる?

「え、急に何…」

急に、そんな話をしだした俺に、食満はキョトンッと首を傾げる。

「良いから聞いてくれよ」
「……うん」

俺がそう促すと、素直に首を縦に振った。

「ソイツは眼鏡掛けてて、最初見たときは大人しいヤツだって思ってた。まぁ大人しいんだけど…」
「……うん」
「でも蓋を開けると、実は体育とか好きで、結構負けず嫌いなのも分かった。予算会議は口が悪いったらありゃしねぇ」
「う…ん?」
「後輩にはベタ甘だし、変なとこで鈍いし、可愛いもの大好きだし」
「え…」
「そんなヤツをいつの間にか好きになってて、でも気付いたら、もうすぐ卒業で、でもやっと神様が運を運んで来たのか、隣同士になれた」

ここまで言って、俺は留三郎を真っ直ぐ見た。

「俺は」
「…っ」
「お前が好きだよ」


キーンコーンカーンコーンッ

途端、授業終了のチャイムが鳴り響く。


「お、授業終わったな」
「…うん」

ニッと笑いながらも、内心はドキドキしている俺は、食満の反応をチラリと窺った。

食満は放心と言う言葉が似合うほど、呆けていて、俺は思わず心配になる。

「け、食満?」
「え、え」

思わず食満の顔面に自分の手を持っていってヒラヒラさせると、食満はみるみるうちに真っ赤になってしまった。
え、何その反応。

「しっ…潮江」
「え、何」

真っ赤な顔の食満が、目の前の手をゆっくり掴んで来たので、俺たちは自然と手を繋ぐ形になる。

「さっきの撤回しても良いですか?」
「あぁ」
「…好きだったかも、じゃなくて…」
「ん」
「好き…です」
「誰が?」

ここまで分かっていて業と聞く俺は悪趣味かも知れないが、仕方無いだろう、食満の言葉で聞きたいのだ。

「潮江が…」
「おう」
「好き…」

そう言って、真っ赤になって俯く食満の掌を、俺はさらにギュッと握った。
やばい、嬉しい…。食満と同じくらいには、自分の顔が赤くなっていることに気付く。

「俺も…」


机と机の少しだけ離れたスペースで繋いだ食満の手は、柔らかくて、俺とは違う。女の子の手だった。その感触に俺は急に照れくさくなって、食満から顔を逸らした。

「食満が好きだよ」


高校最後の三学期の教室で、食満が嬉しそうに笑うのを横目で見て、俺も思わず笑ってしまった。



終わり




あとがき
私は、一体何年待たせたんだ…。と、本当にすいません!!
1700リクエスト、 一ノ瀬めさんに贈る 文食(♀)です
少しでも楽しんで…いや、もうこちらを拝見していないかも知れないのですが…。
机越しというのは青春なような気がします。
恐らく二人はこの後、同じ大学に行き、ラブラブなカップルになっているはずです。


リクエストをくれた方だけお持ち帰りOK

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