2009年クリスマスフリー

※小話連載のクリスマス
※与文食
※二回連載
※現在連載中の話が一段落ついた後の話
※三人が恋人同士になりました
※フリー小説




「真っ赤なお鼻の〜トナカイさんは〜いっつもみんなの嫌われ者〜」
「…でもその年の〜クリスマスの日〜」
「「サンタのおじさんは言いました〜」」


生クリームをガシャガシャとかき混ぜながら歌う男のなんと虚しいことか、彼女もいない。仕事も忙しい。
まぁ、この三人にいたっては、¨彼女¨ではないが、恋人はいるから、虚しくはないのだろうが…。
錫高野与四郎が、パティシエの修行を終えて日本へ帰り、食満留三郎がリストラされ、それを潮江文次郎が拾って、ちょっとした事件が起こりながらも、初めてのクリスマスが来た。

料理屋を営む三人は、クリスマスの準備に取りかかっていた。
クリスマスだからゆっくり三人で…何てことは無い。
クリスマスに外食に来たお客様を迎え入れる為の準備だ。

頭の中には、クリスマス=稼ぎ時、と言う、何とも夢のない言葉がグルグルと回っていた。

まぁ正直、一番忙しいのはクリスマス・イブだったりするのだが、客の入りはかわらない。その変わり、クリスマスが終わった後は正月まで休もう。と三人で決めた為、三人は余計に気合いが入っていた。

基本的に年中無休で働いている三人の、初めての休暇なのだ。
初詣やら、某ネズミの国に行こうやら、予定は沢山入っている。


「お前らなぁ歌ってないで、早く、生クリーム作れよ」

カウンター前で、留三郎は呆れながら陽気に背中合わせで生クリームをかき混ぜている二人、文次郎と与四郎を急かした。

「せっかくのクリスマス何だから、何かしとかなきゃいかんかなぁって」
「同じくそれに乗ってみただけ」

口を動かし手は休めず。流石プロ、と留三郎はその手さばきに見とれたが、後少しで開店となるのだ。
ケーキはなるだけ沢山作って欲しい。

ふと視線を、キッチンの、料理台に向けると、そこには、台に乗せられた。チョコや生クリームの大小様々なケーキの完成品が着々と出来上がっていた。

コレは、殆ど与四郎が作っている。文次郎は料理人だが、与四郎ほど詳しく菓子については学んでいない。任せられたのはクリームだが、しかし、クリームと言えば、ケーキの要、パティシエの与四郎が、文次郎にそれを任せたのは、料理人として、相棒として、文次郎の腕を信頼しているからだ。

留三郎は思わず感嘆の声をもらした。

「美味そう……」
「だろー?」

ニコニコ笑う与四郎に、留三郎は素直にコクコクと頷いた。

「一段落ついたら、一緒に食べような」

文次郎はそう言うと、オーブンを確認し。鍋の蓋を開けて、それぞれ出来を確認すると、またクリーム作りに戻ってきた。

「オーブンにはローストビーフ、ミートパイ、鍋には、クラムチャウダー、トマトスープ…後はパスタ…」
「文次郎、大変じゃないか?」

文次郎の口から発せられる膨大な数の料理の名前に、留三郎が苦笑する。ちなみに留三郎は先程まで、店の飾り付けを行っていた。小脇には空になったクリスマスツリーの箱を抱えている。

留三郎の言葉に、文次郎はニコニコしながら首を振る。

「いや?クリスマス料理こんなに作れて寧ろ嬉しいぐらいだ。なぁ与四郎?」
「作りがいがあって楽しいよなぁ」

その、料理人の鏡!!と言われそうな発言、あんまりにも二人が嬉しそうなので、留三郎は、

「料理バカ…も〜生き生きしすぎなんだよお前ら」

と笑った。そういう、二人の料理に対する姿勢に心底惚れているのだ。留三郎は。
子供のような無邪気な顔が、可愛いと思えるのは、惚れた欲目だろうか?

と、そこで、思い出したことがあるので一言。


「あ、ところでさぁ、お前らにクリスマスプレゼント買ってきたから」
「あっ、オラも!!」
「俺も買ってあるぞ」


三人はそこで一瞬固まる。あぁ、俺って愛されてるなぁと三人同じ気持ちで幸せを噛みしめているのだ。

「じゃっ、じゃぁ仕事終わったら渡すからな」

留三郎が少々顔を赤らめながらそう言って、

「わかった」
「おう」

照れくさそうに二人が返事をした。


そこで、店の開店時間になり、留三郎は店の看板をひっくり返す


OPENMerryXmas
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