↑続き 留三郎がいなくなって、文次郎が、シャッとカーテンを開く。 「……分かりやすいっつーか、見てもないのに行動がバレバレってのがなぁ…」 文次郎が試着室に入った瞬間、想像したのは、照れまくった留三郎の姿。 「まぁそうなるように仕向けたんだが」 ニヤニヤ、人相が悪いのが更に悪くなるような、人の悪い笑み。 伊達に、ドSの仙蔵と一緒に過ごしている訳ではない。いつも無意識に隠しはているが、彼もやはり、その手の住人の一人だったらしい。 あくまでも無自覚だが…。 「……ってか」 人の悪い笑みから、今度は呆れ顔。 「試着室なんてどこの店にもあるんだから一カ所に止まんなくてもいいんじゃねぇのか?」 と言うか、自分の店以外の所から服を持ってこられても店の人が迷惑だ。他の所から持ってきたら泥棒だし。あくまでも、買うか買わないか決める為の試着なんだよな? しかも、ココ紳士服売り場だから、狼男っぽい服なんて無いんじゃ……。 そこまで考えて、文次郎は吹き出した。 「ブッ…ハハハッ、アイツも爪が甘いなぁ」 おそらく、暫くしたら真っ赤になって、場所返るぞ!!なんて息切らして走ってくるに違いない。 その微笑ましい光景を想像して、文次郎は微笑んだ。 文次郎の予想通り、その後、留三郎は真っ赤になって、走って、文次郎が予想した台詞を口にした。 恥ずかしい、恥ずかしい!!何かと言うと、試着室にいろって言ったこととかがだ。 紳士服売り場に狼男の衣装があるか!! とか、失敗に気付いて、戻ってきた。 逃げ出したはずだったのに失敗した。 しかも俺の顔を見て、文次郎は爆笑しだした。 「アハハハッ!!」 「!!?」 最初は何が何だか気がつかなかったが、どうやら文次郎も俺の失敗に気付いたらしい。だからって何でそんな笑うんだよ! 「……文次郎」 ジトーと恨めしげに見てやると、目に涙までためるほど爆笑していた文次郎は、涙を拭って 「悪い、悪い」 とワシャワシと俺の髪を撫でた。毎度コレで俺が絆されると思ってんのかぁぁ!!! 「………もっと」 「わかった」 …絆されてるけどさ!! 色々悔しいが、ヤッパリ俺は文次郎には勝てないのだ。 文次郎は、まだ笑いを堪えながら、俺の手を引いて歩き出す。お前は…人目とか気にしないのかよ!!と思いつつ、嬉しくてしょうがない。 また一緒に出かけたいなぁ…なんて、思ったりしてしまうんだ。 その後、俺が見立てた。狼男の服を着せた文次郎は、ヤッパリ似合っていた。 狼の耳に、黒いぶかぶかのパーカー、ダメージジーンズに太めのベルト、フサフサ尻尾、今度は格好良くも有り、可愛く見えた。 「……ブカブカだな」 文次郎はパーカーの袖を捲りながら、首を傾げた。 先ほどのハロウィングッズの店で購入した耳が、コテンッと揺れた。 可愛い…っ!! 何回も言うけど、コレは恋人の俺の贔屓無しに、抜群に似合ってる!! 道行く女の子達の評価も抜群です!! またちょっとだけムッとしたなんて無いからな!!本当に無いって!! 一人言い訳をしていたら、文次郎に手を出された。 「んっ」 「へっ?」 すると、文次郎は明らかに不機嫌!!と言う顔をした。 「……リボン」 「リボン」 そこまで来て思い出す。おっ……お揃いの。 「買ってないのか?」 「いや、買ってある!!」 「じゃぁ、んっ」 「は?」 そう言って、文次郎は首を差し出す。なっ何なんだ。すると、ニヤリと笑って、腕を掴まれた。 グイッと、唇と唇が触れ合うギリギリまで顔が合わさる。 「……飼い犬には噛まれないように首輪付けとくモンだろ?」 「……え」 「早くしねぇとキスするぞ」 そこまで言われて、俺の停止していた脳内が動き、頬の熱が再熱した。 「なっなっな!!!」 「早く」 そう言われて、掴まれた腕が緩んで、再び、首を近づけられたので、俺は急いでポケットに入れていた。オレンジ色のリボンを文次郎の首にかけて、結んだ。 全体的に黒い服だから、ワンポイントになるように…俺のリボンは赤色で、お揃いの種類の暖色系。 「おっ終わったぞ」 そう言って、文次郎の肩をポンポン叩いてやると、文次郎は嬉しそうに笑った。しかし、その笑顔に見ほれている隙など無く チュッ 「…………」 「感謝と親愛の証ですよ、ご主人」 そう言って、ペロリと舌を出されれば、気付く、はめられた!!! 「……〜っくそっお前な!!」 茹で蛸のように、熱くなる頬と口を抑えて、俺は文句の一つでも言ってやろうと口を開き、しかしまた押し黙る。 ギュゥッと抱きしめられたからだ。 「また一緒に買い物行こうな!!」 そうやって屈託無く笑われたら、文句なんか言えなくなるじゃないか!! 「………おう」 しかし、またハッと気付く、人の拍手の音、パチパチと、文次郎の腕から逃げ出して、バッと音の方を見ると、そこにはいつのまにやらギャラリーが出来ていた。 「何か知らねえがよかったなぁ!!」 「ヒューラブラブ!!」 など声が聞こえたら、たまったもんじゃない。 俺は、もうこれ以上ないほど恥ずかしくなり、やっぱりその場を逃げ出した。 その後、なんとか留三郎を連れ戻した文次郎、服の会計は、さっきの現場を目撃した店員さんにオマケして貰ったとか…。 終わり ハロウィンの後に捧げた相互品です^^ もともと、色々構想を練っていたのですが、ハロウィンのテンションに乗っかりました←←← ダサい服の彼氏の服を選ぶ彼女。デートとか構図が大好きです。 楽しく書かせていただきました。それでは、これからもよろしくお願いします。 [back]/[next] |