かれんばなの椿様に捧げる相互記念品


服を買いに出かけよう!!


イベントごとが大好きな学園長がまたしても思いつきで決めた企画は

『仮装大会』

文化祭と近いから止めてくれなんて言う先生方の制止などいざ知らず。

そんな訳でハロウィン当日、大川学園仮装パーティーの日。服装に頓着しない。と言うか、あまりオシャレなどしない恋人に、自分で服を見繕って着せて遊びたいとは、前々から思っていたことだった。

顔の隈はもう救いようが無いとして、背丈はあるし、今時の人?にしてはシャンッと伸びた背筋。

いつもジーパンにTシャツとかじゃ勿体ないと常々思っていた。
それが似合わない訳では無いけれど。

「……で?」

目の前には苦笑いの文次郎、やっぱり背筋はキレイだ。畜生、なんか羨ましい。
今日は、文次郎と俺とで仮装の為の衣装を二人で買いに来ていた。

「俺がお前の着る服をコーディネートしようかと」

ワクワクした顔の俺と、既に疲れた顔の文次郎。
服を買いに行くぞと誘ったときも、何だって良いじゃねぇかと言われたが、前からやりたかったのだ。俺は楽しくてしょうがない。
ちなみに、何に仮装するかはくじ引きで決めており、俺は吸血鬼、文次郎は狼男だった。

しかし、ちょっとした好奇心で、俺は紳士服売り場でスーツを取り、文次郎を試着室に押し入れて、小物売り場で赤いリボンとマント(ハロウィン仮装用品で売っていた)を買うと

「これ着てみてくれ!!」
「……え?」
「良いから!!あっ、このリボンは首に巻いて、蝶々結びにしろよ!!マントも着用すること!!」
「おっおい!!留三郎」
「じゃ!!」

文次郎の制止の言葉を聞かず。それだけ言うと、シャッと試着室のカーテンを閉めた。
それからちょっと考えて、今度は薬品売り場へ、ワックスを買いに行った。



一方文次郎の方はと言うと。

「………おい」

自分の姿に唖然とした。律儀に着てしまうあたりが文次郎の良いところだ。
俺の仮装するものは何だったか?確か狼男だったよな!?これ違うよな!!?

見事に吸血鬼の格好になった文次郎は、まだ来ない留三郎の姿を思い出し、盛大にため息をついた。



ワックスを買って帰ってきた俺は、文次郎がいるだろう試着室の前まで来ると

「文次郎〜開けて良いか?」

と聞いた。

「おぉ〜」

と返事が来たので、シャッと開ける。
…そこにいた吸血鬼は、俺の想像を遥かに超えていた。

「……もっ、文次郎?」
「…何だよ?」

メチャクチャ似合ってる!!流石俺!!
一人自画自賛しながらその出来映えの良さに満足する。
しかしまだ完成はしていない。
俺は、買ってきたワックスの蓋を開けて、手に付けて、文次郎の頭を掴んだ。

「うぉ!!」

前のめりになり文次郎の頭が目の前に来ると、俺はワックスが付いた手を文次郎の髪に馴染ませ、形を整える。

「よっし!!」

完璧!!何をされたのか良く理解していない文次郎の間抜け面に笑ってやると、相手は眉間に皺を寄せて

「何のつもりだ」

と聞いてきた。
理由も何も

「お前で服着せ替えて遊んでみたかっただけ」

シレッと言ってやると、文次郎は眉間に皺を寄せ怒鳴った。


「バカたれ!!俺達は仮装の服を買いに来たんじゃ無いのか!!」
「良いじゃねぇかよ!!似合ってるんだから!!」

その証拠に、ほら気付け、通り過ぎて行く女の子達の視線!!お前見てるんだからな!!

『あの人見て〜』
『あっ、吸血鬼かな?』
『どこかで仮装でもするんじゃない?』
『背高〜い!!』
『隈あるけど、よく見ると男前だし』
『カッコいい〜』

ヒソヒソ

「………」

ムカッ

って、何で俺がムカムカしてるんだよ!!
良いじゃないか!!そもそもカッコ良く仕立てる為に来たんだから!!

「留三郎?」

そんな俺に気付いたのか、文次郎は心配気に首を傾げる。
くそ、そう言うところが…普段は暑苦しいぐらいなのに、実は他人のことに人一倍敏感で……好きだと、思うんだ。

「あぁ、大丈夫、大丈夫」

ヒラヒラと手を振ると、目の前の吸血鬼は、納得いかなげに、また眉間に皺を寄せた。
しかし、似合う。似合いすぎて怖いぐらいなので、俺は文次郎のマントを掴んだ。

「そう気にするなよ、何でもないって、それより遊びはこれで終わり!!な、そろそろ真面目に探すから!!」
「おっおう」

畜生!!あぁぁカッコいい!!自分の恋人だから尚更なのかも知れないけどな!!カッコいいんだって本当に!!

俺の勢いにビックリしたのか文次郎が返事をして、俺はまたカーテンを閉めようとした。すると、文次郎の腕が俺を掴む。

「……?」
「このリボン…」

首に巻いたリボンをシュルシュルと解いて、俺の首に巻いて、蝶々結びする。

「えっ、ちょ、なっ何」
「この色、やっぱりお前の方が似合うと思うぞ」

そう言って、俺の頭を一撫でして、今度は自ら自分でカーテンを閉めてしまった。

そりゃそうだ。だって、それは結局俺が仮装するために使うんだから…

でも、文次郎に言われて、そこで呆然と立ち尽くすのは俺で、カァァァと頬に熱が集中した。

「……〜っ!!!」

はっ恥ずかしい!!

あれだけ大騒ぎしたほどカッコ良くしたてた文次郎の口から、あんなに穏やかな顔で、似合うと、言われて…うわぁぁ!!

膝を抱えて出来るなら誰にも見られずにいたいのだが、店でそんな事してられない。

着ているモノを脱ぐ音がして、文次郎がそういえば、と喋り出した。

「そうだ。そのリボン、お前と同じ種類の俺に似合うの買ってきてくれよ」
「え?」

それは要するに…お揃い!?

「俺はそう言うのは良くわからんが、お前と一緒ってのも悪かねぇだろ」

そう言って、顔は見えないが、楽しそうに笑うソイツに、俺は限界を超えた。……恥ずかしさの

ボフンッと音をたてるかのように、赤い顔がまた一気に赤くなる。

どうしよう、どうしよう

「……嬉しい…」

今まで、恋人らしいことをしてこなかったと言えばそんなことは無いが、お揃いにしよう。なんて、普通の恋人が言いそうな、甘い提案なんて無かったから、しかも、あの堅物文次郎がだ。
にやける顔が止まらない。ついでに赤くなる頬も押さえが効かない。

抱きしめたい。抱きしめてほしい。

そこまで考えて、ハッとなる。いやいや落ち着け俺、こんな人が見ている場所ではダメだろ!!

そうだそうだ。コイツの狼男の衣装そろえてこなきゃ!!兎に角ここから逃げよう。そうしよう!

「もっ文次郎!!」
「あ?」
「俺、狼男の衣装揃えてくるからお前まだそこにいろよ」
「……はいはい」

なんだか若干諦めが入った返事が聞こえたが、俺はダッシュで逃げ出した。


→続く
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