くもわのうぃる様に捧げる相互記念品



あんまりにも有り得ない展開だったため、俺はちょっと突っ込みたくないと心から願った。


不思議の国の食満



目が覚めると、文次郎がいた。
眼鏡をしていて、見たこともない格好をしていた。首には南蛮の時計がかかっている。

なによりおかしいのは、その黒いウサギ耳



「おい、食満起きろ!!」

いやいや起きてるから、突っ込みどころありすぎて頭いてぇ…

「文次郎?」
「おぅ」
「色々突っ込みたいところは沢山あるがな、それは何だ」
「何が?」
「耳!!」


文次郎が首を傾げると、ウサギ耳がピョコンッと揺れてしょうがない…さっ触ったらどうなんのかな?

文次郎はさも当然だと言うように

「いつもついてるが?」
「!?」

いやいや、平然と言ってのけるな!!おかしいから!!絶対おかしいから!!

心の中で叫んだ俺が、文次郎を見ると文次郎が時計を見て顔色を変えたのがわかった

「やべっ!!仙蔵に殺される!!行くぞ食満!!」


何故か手を引かれ、俺達は走り出した。




「で、何で俺はこんな場所にいるんだ」


ついた場所はい組の部屋


「とりあえず準備があるんだよ、そこの菓子でも食べててくれ」

文次郎は棚をガサガサとあさり始めた。
俺の目の前には大福餅
と緑茶
文次郎を待っているのも疲れたので、俺は大福と緑茶を手にとって食べ始めた。



「は?」

視界がどんどん小さくなっていく、なんだこれは!!

「あ゛!!」

文次郎が叫んだ

「それは体が小さくなる大福餅だった!!」
「はぁ!!!?」

文次郎は俺をヒョイッと軽々持ち上げると、一年用の服を取り出した。

「鉢屋か伊作の仕業だな……悪かった食満、とりあえずこれで我慢してくれ」

俺は良くわからないが、差し出された服を来た。
すると、また文次郎に抱き抱えられて長距離走だ。
ちょっ、ちょっと待ってくれ!!さっきから展開が早くてついて行けないんだよぉぉ!!!!


次に来たのは裏裏山

文次郎は走る足を急停止させた。

「……?」
「文次郎、留も元気かぁ?」

このちょっと訛った喋り方は

「「与四郎!?」」

しかし、俺の見た与四郎も変な格好だった。
耳があった。猫耳
服も見たことがない。

与四郎はニコニコ笑いながら、その場からユラユラして消える。

「!?」

俺が思わずビックリしていると、与四郎は文次郎の後ろにいた。

「つまらん、文次郎たまには反応しぃ」

眉をしかめてブーブー言う与四郎に、文次郎は

「やかましい!!」

と答えて、与四郎を振り切った。

「仙蔵がカンカンだから、きぃつけるだぁよー!!!」
「わかってらぁ!!!」


大声で受け答えして、文次郎は走った。
さっきから息が乱れていない。

「…………」

さすが鍛錬バカ
俺だったら息が切れかかっているかもしれない。
………この差が悔しい。

文次郎がまた走っていく先には、一件の茶屋が一つ


「……あっ!!文次郎に留三郎!!一緒にお茶…」
「…………」
「どうですか……」
「すまんっ!!」


伊作と乱太郎と長次が見えた気がしたが、文次郎はスルーした。
なんつーか、流石と言うか……長次がいたから気付いたんだろ!!
そういえばあいつらも
見たこと無いような服来てたよな……俺は普通にいつもどおりの服なのに……ってか俺今小さくなってんだよな!?何であいつら俺だって分かったんだ!?
ってか、えぇ…与四郎がなんで来てるんだよ!!


俺が再び混乱していると


「「ちょっと待ってください先輩」」

同じ顔した2人の双忍

「「鉢屋、不破」」

二人はにっこり笑って答える。

「「ここから先は選択式、立花先輩の元へは、ここを通らないといけません、僕ら二人のうち片方が正解の道です」」
「鉢屋」
「三郎」
「「はどっちでしょう?」」


文次郎はすっごくめんどくさそうに顔をしかめた。
わからんでもないがな

すると、何を考えたか、紙と筆を取り出した。
紙を2人に見せる。


「鉢屋、不破」
「「なんですか?」」
「これは何色?」
「「白?」」

文次郎は紙を裏返す

「これは?」
「「白?」」
「本当に?」

文次郎は意外だと言う顔をする。

「「え?」」
「いろいろ呼び方があるんじゃないのか?」
「「えっえ?」」
「なぁ不破?鉢屋?」

にっこりと問いかける様は嫌に優しくて


「天才の鉢屋がこれを答えられない訳がないだろう?」
「「あっあたりまえじゃないですか」」
「はいっせーの」
「黒」「白」


ニヤァァ、文次郎が笑った。それはもう本格的に黒かった。さすがい組


「鉢屋、右」


鉢屋が引きつった笑顔をした。
とすると、右が鉢屋で左が不破

「なっなんでわかったんですか?」
「ん?」

あぁ、と文次郎が呟く

「ひねくれ鉢屋君と、純粋な不破君の違いをだな、ちょっと実験」

だが、文次郎は鉢屋の右と答えた道とは反対…すなわち左に

「なーんてな、不破も鉢屋に揉まれて強くなっただろうし?だから俺の答えは鉢屋、左だ」

文次郎は迷いもなく二人にどうだ?と笑ってみせる。

「「………お見事」」


二人が脱力した。
文次郎が右と答えるのをわかっていたところまで想定していたあたり、俺は凄いと思うのだが…

帰り際に不破が煎餅をくれた。

まさかとは思うが…

「よかったな食満、それ食ったら元に戻るぜ?」

やっぱりか!!!

「でも今それ食ったらヤバいことになるからな…服が」


確かに…
グリグリと頭を撫でられ、子供扱いに思わず噛みつこうとした。
が、俺は再び文次郎に抱き上げられてしまう。

「ヤベェ!!完璧に遅刻だ!!」


ウサギ耳がピンッと跳ねて、文次郎はまた駆け出した。
だからこの耳どうなってんだよ!!
思わず両手を伸ばして
グイッと引っ張ると

「………!!」

文次郎がコケた。

はぁ?


「何しやがる!!」
「えっえ?」

文次郎は耳をさすりながら、涙目で訴える。

えっ…これ本当に神経繋がってんのか?

もう一回引っ張ってみる。

「ぎゃぁぁ!!」

文次郎が悲鳴をあげた。
ペタンと垂れた耳に顔を真っ赤にしている様は
えっ何コレ……可愛い…


「やめんかバカタレ!!俺は急いでんだよ!!」
「〜っ!!!」

キッと睨みつけられるが、可愛い…文次郎が可愛い!!
思わずギュゥと抱きしめて頭を撫でまくると、案の定不満そうな声を出して引き剥がされた。

「なっ何でそんなキラキラした目をしていらっしゃるんですか?食満さん」
「面白いからですよ文次郎さん」
「「……アハハ……」


俺が腕を伸ばした。文次郎が腕を掴んで俺を担ぎ上げた。

「…アハハ」
「…っち」

さすがにもう触らせてくれないか

しかし……なぁ、なんで
『姫抱き』!!?


「文次郎さん、文次郎さん、何でこの体制なんですかねぇ?」
「それはですねぇ食満さん、あなたが俺の耳を触らないようにするためです」
「恥ずかしいんですが」
「恥ずかしがれよ」


おいぃぃぃ!!良い笑顔で言うなよ!!
恐いわ!!なんだ黒か、黒文次郎さん降臨かコノヤロー!!!




続く
[back]/[next]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -