金柑の棗様に捧げる相互記念

もっと、やくにたちたい!!


……皆さんこんにちは、編集部マネージャー、食満留三郎です。

つい先日、担当の凄く頼れる小説家、先生こと、潮江文次郎先生に告白され、両思いになり、なんと…なんと、今日は…


「留三郎、行くぞ」


『デート』です!!
表向きは潮江先生の書いている小説の、参考にイルカの生態を調べるためと、骨休みも含まれているけど…

潮江先生がマネージャーや名字じゃない呼び方で呼んでくれるのが嬉しくて、俺は小走りで潮江先生の後をついていく。


「はいっ!!潮江せんせっ……っ!?」

潮江先生の名前を呼んだら、鼻を摘まれた。
少し息苦しい。

「はにふんへふか!?」
(何すんですか!?)

すると、少し不機嫌そうな潮江先生が

「名前で呼べ、留三郎」
「ふぇ……?」
「名前で呼んだら、放してやる」
「ふぇ!!?」

潮江先生はニッコリと笑った
ちょっ、ちょっと待って、まだ心の準備が出来てない!!
みるみるうちに真っ赤なった俺は、鼻を摘まれた状態で潮江先生を見つめた。
酸素のない魚のようぬ口をパクパクさせる。

「もっ……もっ…」


鼻は摘まれているが、息が出来ないほど摘まれている訳でもない。
なのに、妙に息苦しい…
緊張とよくわからない恥ずかしさが絡まって、言葉に出てこない。

グルグルと混乱する俺に、潮江先生は吹き出した。


「ぶっ…悪い悪い…虐めすぎた、クック…」

笑いを堪えているが、まったく堪えていないのがちょっとイラッと来る。

「潮江先生…?」
「ほら戻った、うんまぁいいや、その内……な」「はい………」


優しく頭を撫でられ、潮江先生は俺の鼻から手を放した。


が、そのまま手は俺の手へと絡まった。

「はっ?」
「行くぞ〜!!」
「へっちょ!?」


抵抗する暇も無く、潮江先生は歩き出した。

俺は赤くなった顔を俯かせる。


潮江先生はズルい

ズルいけど、カッコいい


「今日は沢山遊んでやるからな」
「俺子供じゃないですよ!?」

頭をワシャワシャとされて恨みがましく睨めば、握った手に力が籠もった。


「どこに行こうか?」
「………ペンギンが見たいです」
「おっし」

そのままゆっくりゆっくり歩き出した。





「可愛い!!」
「あぁ」
「可愛いですよ!!先生!!」
「そうか」

ペンギンを見に行けば、ちょうど名物触れ合いコーナーが行われていて、俺の周りにはペンギンがワラワラと集まった。
思わずギュゥと抱きしめると、ペンギンもすり寄って来た。
あ〜もぉ俺すっげぇ幸せぇと感じていたら


「留三郎ー」
「はい?」

パシャッ


ケータイのカメラに撮られました……って

「先生!!」
「あ〜可愛い、可愛いヤツに可愛いものプラスした効果もあってメッチャ可愛い」
「えっ…あっの」

ケータイの画面を見ながら、潮江先生が幸せそうに笑った。

そのまま、画面にチュと口づけて

「俺これ待ち受けにしよっかなぁ〜……」

と俺の方を向いてニヤリと笑って画面を見せると

そこにはペンギンはいず、俺の満面笑顔が写っていた。

「………!!!!?」


いっきに赤面した俺に、画像保存しようとしている潮江先生…って待て待て!!!

「ちょぉぉ!!ペンギン関係無い!!消してください!!すぐに!!」
「イヤですぅ〜」
「可愛く言ってもダメなもんはダメですからぁ!!!!」

潮江先生の腕をガクガク揺さぶってみたが、なんと潮江先生は画像保存してしまいました。


潮江先生はケタケタ笑って、先ほどと同じようにチュとケータイ画面とキスすると今までの中でも恐らく一番、色っぽい極上の笑みを浮かべた。

周りにいた客たちの顔がいっきに赤くなる。

ダメだ……

何がダメなのかは分からないが、いつだってそうだけど、俺、潮江先生と一緒にいると心臓が死ぬ

しかもその笑顔は無意識ですか!!?
どんだけだよ!?

その後も、写メを撮られまくり…やっとお昼の時間になった。


……疲れた。

立ち寄ったのは、洒落たレストランで、水族館の水槽が見えて綺麗だった。潮江先生のセンスは俺の好みをついている。俺も少し調べておけばよかったかな…。


「潮江先生…楽しそうですね」

水槽を見ながら満足そうな潮江先生を見ると、俺が疲れたのを感じたのか、潮江先生は心配そうに俺の額に手をやった。

「大丈夫か?熱があるんじゃ…」

そのまま額を自分の額に合わされ、やっと収まりかけた心臓が、また心拍数をあげる。

「ねっ、熱はないですよ…?」
「そうか?顔が赤いが?」

そう言って、口の端をあげるあたり

「また、からかかってますね……」
「なにがだ?」
「うぅ、早く顔どけてくださいよ……」


今回はすんなりと離れて、ホッと一安心

「ここの飯美味いぞ」

運ばれてきたのは、豪華な洋食

「……は?」
「金は払い終わってあるから」
「は!?」

なんとまぁ抜け目無い……クソ、割り勘にして貰おうと思ったのに!!
でも…目の前には、到底自分には払えなさそうな料理たち……

くっ…悔しい

「留三郎?」
「はい……?」

ちょっと自分の情けなさにグッタリしていたら、

「ほれ」

料理を口に入れられた。
見た目は「はい、あーん」だ。
…この人は本当にもう!!!!!
あれ、でも


「美味しい」
「だろ?」
「………はい」


クッ、笑顔だ。
これも無意識なんだろーな…





昼ご飯を食べ終わり、次は本来の目的である。イルカを見に行く


「「おぉ!!」」

2人して感嘆の声をあげた。水族館の目玉、白イルカのカップルが、寄り添うように泳いでいる。

真ん中には、子供のイルカだ


「可愛い……!!」
「イルカは好きか?」
「海で好きな動物、一位二位を争うぐらいには!!!」

力説すると、潮江先生は微笑んで、頭を撫でてくれた。


実は、この白イルカには、ジンクスがあったりする。

今は明るいが、この白イルカのコーナーでは、3時きっかり、照明が暗くなるのだ。
その時に、相手の首に、自分のイニシャルが入ったネックレスをかけると、恋が叶うって言う…

べっ…別に信じてる訳じゃないから!!ちょっとした興味っていうか!!だからネックレス買ったんだから!!

自分に言い訳をして、潮江先生をチラリと見る。

イルカの説明が書いてあるところを見ているらしい。
……放れないように

時刻は、2時59分

あと、1分

あと、30秒

……1 2 3!!


首にジャラッと何かがかかる感触

潮江先生の首にもネックレスをかけると

照明がパッと明るくなった。



「「…………」」


前を見ると、潮江先生と目があった。
彼は、ビックリした表情で俺を見た。

今まで、そんな顔を見るのははじめてで、俺はマジマジと潮江先生を見る。


「……やられた……」


潮江先生は苦虫を潰したような顔になった後、ビックリするぐらい顔を赤くして、その場にしゃがみこんだ。
顔はよく見えない。


「潮江先生?」
「くそ、最後の最後で」
「…………」
「今日は俺がリードしたかったのに、うぁ〜なんだこれ!!」


潮江先生はまた顔をあげた。

「すっげぇ嬉しい…」


そんな表情、されたら、照れる。恥ずかしい。


「潮江……せんせっ…」

思わず自分も、潮江先生と一緒にしゃがみこむ


「喜んで、貰えましたかっ?」

首にかかっているのは、イルカの形のM.Sと彫られているネックレス


「俺、今回は、潮江先生に大人の差みたいなのを見せつけられて、少し悔しかったんです。潮江先生余裕そうだし……」

潮江先生に向かってそう言うと、彼はまだ赤みの残る顔で

「バーカ」

と言われた
ちょっとムッとしたが

「余裕なんてあるか、ココのこと何回も調べて、お前が楽しめるようにしたんだぞ……」

それは……

「俺はお前のことになると余裕なんか持ってられない」

それは……
ふてくされたように、でも俺の頭を撫でながら、慰めるように言う潮江先生が、可愛くて、カッコよくて

「〜っ、反則」

そうか、同じなんだ。



人の目なんか気にせず、思わず抱き付いた。



「潮江先生……文次郎さん!!」
「えっ?」
「大好きです!!」






俺の恋人は、小説家

俺の仕事は、編集部のマネージャー

俺の恋人は、まったく手のかからない人で、俺は毎日彼に助けてもらってばかりで、彼の役にたちたいと、いつも思っています。

彼は大人で、エスコートが上手くて、優しくて

でも

相手に対して余裕の無い気持ちはいつだって、


同じだったみたいです






「……小説家、潮江文次郎、恋人とデート、相手は男…」

新聞を見たらこんなことが

「バレたな」

潮江先生はそう言ってコーヒーを一口

「バレたなって!!あぁ俺のせいですよね!?すいません!!」
「謝んなくてもいーだろ、マスコミなんかより俺はお前の親御さんに押し掛けられる方が恐い」
「………さいですか」
「……えぇそうです」

潮江先生の書斎、先生はパソコンをカチカチやりながら、こちらを向いた。

「潮江…先生?」
「……名前!!」
「もっ……文次郎さん?」
「留三郎、コーヒー入れてきて」
「え?」


いつも自分で入れてるのに?

「役にたってくれるんだろ?」

彼は笑って、マグカップを俺に渡した。

「はいっ!!」



何があっても、彼とならきっと大丈夫

渡されたマグカップに、コーヒーを入れるために台所に気分良く向かった。







このお話は、8000ヒットフリーの続きです。まずはそちらから読むことをお勧めします。

それにしても、文次郎がお前誰!?な感じでしたね(-"-;)
男前に書こうとしたらこんな感じになってしまった……。
でも楽しかったです←←

ケータイ画面にキスする文次郎とかペンギン抱きしめる食満とか
(*´д`*)

棗様にはパソコンで送信し、なんとか喜んでいただけたようです(^-^)
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