謎の男現る


室町後期:忍術学園敷地内。
煙が立ち込めるその場所に茫然と立ちながら、立花仙蔵は、しまったと思った。

本日は学園朝礼の日、全校生徒が学校の校庭に集合し、学園長の話を聞く。という、現在日本でもどこにでもある普通の学校の朝の風景の一つだった。
しかしここで唯一違ったことは、六年の列の隣に一年生の列が出来ていたことだ。
六年生を隣に立たせることで、それを見本とし、一年生、とくに朝から騒がしい一年は組が静かに並ぶように、という意味があったのだが…。
本日の立花仙蔵の不運は、普段から何かと苦手視している二人組、山村喜三太と福富しんべヱが図ったかのように己の隣にいたことであった。

普段通りに、厳禁コンビに絡まれた苛立ちに、ついつい、普段から常備してある宝禄火矢を投げてしまった。
勿論、仙蔵自身投げるつもりなど全く無かったのだが、厳禁コンビが絡んでしまうと、どうにも冷静力を事欠けるのが立花仙蔵という人間である。

投げた宝禄火矢はそのまま食満留三郎の元に行き、留三郎がそれを

「うおっ!!」

とレシーブし、長次がそれを無言で

「……んっ」

と、トスし、小平太がそのままの勢いで

「いけいけどんどーーーーん!!!!」

と、盛大なアタックをかましたその結果…。

「えっえ!!?」

宝禄火矢は不運な伊作のところへ…

「はぁ!!?」

は、行かなかった


「「「文次郎!?」」」

伊作と仙蔵と小平太が叫んだ。
小平太がアタックした宝禄火矢は、何故か文次郎のところへ来たのだ。

「はぁ!!?」

そのままドカーンッ!!!と言う音と共に、文次郎は土煙の中に包まれた。

伊作ではなくまさかの文次郎…珍しいこともあるものだ…。
そう思った六年と他生徒と先生たちだったが、六年生がそう簡単に怪我をしてもらっても困る上に、相手は、学園一ギンギンに忍者していると言われるあの文次郎だ。上手く回避は出来ただろう。と踏んで対した心配はしていなかった。

そうして案の定、土煙の中からゴホッ!!ゲホッ!!と咳き込んで、文次郎はその姿を現した…が…。

その姿を見た瞬間、全員が同時に首を傾げた。

土煙の中から出てきたのは確かに文次郎だった。しかし違う。
明らかに…何かが違うのだ。

長次以上に高い身長、顔も文次郎をもう少し大人にさせたような…ギンギンで暑苦しい雰囲気は少し和らいで、冷静さが増した、どう見ても年齢を重ねている。
そんな存在が、煙の中から出て来た。

「……っくそ…あれほどオーブンを壊すなって言ってんだろうが!!!!厨房に二度と入るな!!とくに小平太!!!!」

文次郎に似ている男は、仙蔵たちを含む六年にビシッと指をたてて睨んだ後、小平太を翼と呼んだ。

「こっ……へいた?」

指をさされた小平太は名前を呼ばれて狼狽える。

「それから仙蔵、お前はこの銃刀法違反の時代になんつー危ないもんを加熱に使ってんだ!!火薬なんてどこで仕入れたんだ!?」
「はぁ……?」

火薬なんて忍術学園では使うのが当たり前だろう?と呼ばれた仙蔵も戸惑いを隠せない。

土煙が完璧に消えた。

文次郎に似た男は、奇妙な黒の着物に、後ろに鬼の仮面の紐を首で括って後ろに回した姿をしていた。


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