何もしらないくせに




文次郎と与四郎が伊作を睨んで、留三郎が困ったような顔をする。

留・「伊作……」

伊作も文次郎と与四郎を睨みつけていた。

伊・「何も知らないくせに」
文&与・「「あ?」」
伊・「私が留三郎に対して何もしない訳ないだろ?小さい頃からの大事な人なんだから」

伊作の口調には若干怒気が混じっていた。

伊・「留が…私を頼ってくれなかったんだ」

それを聞いて、文次郎と与四郎が留三郎を見る。

留・「…伊作は……昔からお人好しで不運で…俺まで世話になって抱えたら、疲れるかと思ったんだ……」
伊・「留……」

それを聞いて、与四郎が伊作に謝った。

与・「…悪かった……そっちの事情とか全然しらなくて勝手なこと言った…」

それを聞いて、伊作が目を見開いて、苦い顔をした。

伊・「良いよ…留、あのね、私、君を取り戻したかったんだ」
留・「うん」
伊・「しかも、留、全然連絡くれないじゃないか、心配…したんだよ?」
留・「うん……」


善法寺伊作の世界は、食満留三郎を中心に回ってきた。
小さいときに手を繋いでくれた唯一の幼なじみが、自分のせいで会社からいなくなり、行方もわからなくなった。
伊作は心配で心配で、食事も喉を通らなくなったが、自分が頑張ればいつか帰ってくるのでは?とそれこそ必死に仕事に務め出世した。
そして、とある雑誌に目を通した。

伊・『留…三郎?』


そこには、そこに写る自分の知らない男二人に、全てを任せて安心しきった笑顔を浮かべた留三郎がいた。



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