19

ふとした瞬間、





文次郎の家に住むことになった与四郎、ちょっとした疎外感を感じていた。

文次郎・「だからな、これはこういう野菜にすると……」
留三郎・「へぇ……」

台所、文次郎が教えて、留三郎が教わる。
同年代と言えども師弟関係。しかもほぼ毎日を台所に費やす師匠と、努力家の弟子である。
料理を教えているところは、もはや二人の空間で、与四郎の入る隙がない。与四郎が留三郎に教えたことは、飾り切りくらいだ。そんなわけで、疎外感を感じるパティシエ与四郎は今回、ただ座ってるだけの試食係りだった。

文次郎・「そうそう…それで」
留三郎・「これで…」

笑いあう二人に、与四郎が目を細める。
疎外感、も感じるが

与四郎・「腹減った」
文次郎・「ん?待ってろすぐに出来るから」

夕御飯の合図が聞こえた。この光景も、時間も、全てが幸せだと感じる日々が好きだと思う。

与四郎・「……(あぁヤバい)」

泣きたくなりそうな顔を隠す。そろそろ自分は、文次郎離れをしなくてはいけないと感じた。


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