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人には意外な特技があります





そもそも、それは最初から一目惚れだった。

リストラされて、道でぶっ倒れていた俺に、優しくしてくれた人、優しい顔で笑う人、だから、この人のそばにずっといたいなんて思って

留三郎・「わかんねぇ」

作り置きのスープを一口、味覚が一般人よりかなりあやふやな自分は、やっぱり特訓しないよりマシと、味覚を高める特訓みたいなものをしている。例えば朝ご飯のスープの味付けを言ったり

留三郎・「塩は、わかるんだけど…」
文次郎・「ん〜まぁ焦るな、独立出来なかったら永久雇用にしてやるよ」

そうやって微笑む自分の師匠に、留三郎はそのままでいいかも…と思いかけたが、首をブンブンと振る。なんにせよこのままじゃいかん!!

留三郎の行動に、文次郎は?マークを浮かべながら、頑張れよ、と穏やかに言った。

しかし、料理人になれなくても、料理関連の道に、留三郎を進ませることは出来るかもしれないと感じていた。

文次郎・「じゃぁ、味覚の特訓は終了、今日はフルーツカットをやってもらう」
留三郎・「やった」

留三郎が思わずガッツポーズになる。

留三郎が味覚オンチなのは分かってもらえただろう?だが、前に、文次郎はこうも言わなかっただろうか?大根の桂向きはスルスルやっていた。と、そう、留三郎は全く無自覚だが、飾り切りやフルーツカットの天才だった。

文次郎・「あもりものの野菜で、鳳凰作ってたときはヤベェこいつってなったよな」
与四郎・「留は味覚以外は器用だから」

飾り切りを楽しそうにやる留三郎を見ながら、二人は、ますます留三郎を手放せなくなったと笑った。


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