15

トラウマと思いつき





2人で攻防戦を続ける文次郎と小平太、小平太がふいにフッと手を緩める。しめた!!そう思った文次郎がドアを閉めようとするが、文次郎の腕はグイッと引っ張られる。
マヌケに小平太にダイブする形になり

小平太・「おじゃましまーす!!」
文次郎・「おおぃ!!」

そのまま文次郎をヒョイッと抱き上げて、中に入っていってしまう。小平太に対してトラウマがある文次郎は、そこでビシッと固まってしまう。

あっ…ヤバい。

小平太・「文次郎…?」
文次郎・「………やめっ、こわい…怖い…」

息が出来ず。文次郎は小平太の服をキツく握り締めた。

小平太・「文次郎?」
文次郎・「与四郎…助け……怖い…ヤダ」


急に子供のように怯えだした文次郎に、小平太が悲しそうな顔をした。小平太は確かに後悔しているが、文次郎には襲ったときの恐怖がまだ残っている。

小平太・「文次郎…ごめん」
文次郎・「………」
小平太・「ごめんな」


そのことならもう許しているのに、と文次郎は思った。
トラウマから抜け出せない自分が情けない。

小平太・「自分勝手だけど、撮りたいんだ。お前の世界を、私はいろんな人に見て欲しい」
文次郎・「………」
小平太・「だから頼む、雑誌に載せたいんだよ」


その顔は、昔までの子供のような七松小平太が、大人の顔になった瞬間だった。




与四郎・「…で?」

与四郎がムスッとした顔をする。与四郎はまだあの頃を忘れた訳じゃない。文次郎がトラウマを持っているのも知っている。
だから与四郎は小平太が気にくわない。甘い文次郎にイライラする。

文次郎・「負けたってか…うんいや本当、与四郎君睨まないで下さい俺が悪かったです!!」
与四郎・「文次郎は甘い!!」

与四郎は文次郎に懇々と説教をするが、ふっと思いついたように口を開いた。

与四郎・「そうだ、俺もここに住めば良いじゃん」
文次郎・「はっ?」


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