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嵐の予感





その日は、ちょうど店が暇だった為、文次郎は留三郎に料理を教えるために時間を使おうと決めていた。

そして気付きはじめた。留三郎はこう、なんと言うか、味を理解出来ていない。料理オンチと言うより、味覚オンチ
包丁の手付きは基本を踏んでいるし、大根のカツラ向きなんてお手のもの……なのだが、どうしてこう……味付けを任せると壊滅級な味になるのか…。

味覚は生まれた最初から育つ。しかし大人になれば、それも止まり、もう直すことは不可能だ。分量があえばそれなりに作れる。
ので、それなりにつくってもらうしか無い。

「……もしかしなくても永久雇用?」

初弟子はこの様子だと、どうやら自分の手元から巣立っていってくれないらしい。

「……まぁいいけど」

そんなことを思いながら、笑っていると、電話のベルが鳴った。

「はいはい」

そのときに電話の電線を切っておけば良かったと、今になって激しく後悔している。


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