09 周りが良い奴ばかりだと困る ―ところで、留三郎に会う前の与四郎の話― 俺の名前は錫高野与四郎、フランスで菓子職人の修行をついで帰ってきた。幼なじみの文次郎との約束……すっかり忘れてたと思ってたんだけどなぁ…律儀な性格のアイツが忘れるわけ無いか。 空港でそんなことを思いながら、文次郎を待っていたが、来ない。 与四郎・「そうだった…アイツぁ変なとこで抜けてるヤツだった」 隈をつくった幼なじみの顔を浮かべ、苦笑い。 何だかんだで自分は、文次郎に世話になっているようで、世話を見ていることが多い。 おせっかいな幼なじみは、厄介ごとを拾ってくることも多々あり、今回もそんな理由か、単純に寝坊したってことがある。 与四郎・「でも…」 久しぶりの再開なのだから、少しくらい自分を優先してくれないだろうか、そう考えるとイラッときた。ので、文句だけは忘れずメールに書いておく 潮江家の玄関もかなり久しぶりだった。 文次郎の両親は、昔から自由な人達で、ハワイに移住を決め込んだらしく、この一人で住むには広い部屋は、文次郎のモノになったらしい。 与四郎・「オジサンとオバサンも相変わらずだなぁ……」 そう呟きながら、玄関の呼び鈴を押すと 控えめに扉を開く音がして、出て来たのは 留三郎・「…はい?」 与四郎・「…は?」 留三郎・「えっ!?よっ…はぁ!?」 与四郎・「なっ……何で留がここにいるんだべ!!?」 そんな訳で、従兄弟と衝撃の再会をはたした。 錫高野家が食満家に訪れることが多かったから、文次郎と知り合うこともなかったはずなのだ。だが、まさか会ったこともない、自分の従兄弟を拾ってくるとは… 諸事情を話す留に思わずためいき、俺の周りはお人好しばかりだ。 与四郎・「でもまぁ、留と仕事すんのもわるかないかな」 留三郎・「すまんな」 苦笑した顔が文次郎にソックリで、思わず頭を撫でていた。 NEXT [back]/[next] |