07 何にしても笑顔は仕事の基本 包丁を研ぐ、と言う作業は、料理人にとっては一番神経を使う。と言っても良いような気がする。なにより、この作業一つで野菜や肉を切るときの切れ味が、何倍も増すからだ。これに限らず。料理人は繊細な作業を要求される。 しかし、やりすぎは良くないことも知っている。知っているんだろうが、幼いときに身につけた癖、と言うものは、なかなか消えてはくれないようで……。 文次郎・「………」 焦り出すと包丁研ぎに専念する幼なじみの行動、相変わらずのそのクセに、与四郎は苦笑した。 先程の従兄弟発言に、文次郎は結構衝撃を受けたらしかった 与四郎・「文次郎」 声をかけると、文次郎はグルッとこちらを向いた。 文次郎・「へっ?」 抜けた声が聞こえて、与四郎は文次郎の手を握る。 昔から、料理が好きだった男の成長を確かめるように 与四郎・「文次郎、ちょい笑ってみ?」 文次郎・「は?」 文次郎の口を掴んで引っ張り、グィーンッと引っ張る。 文次郎・「!?はにふんはほ!!」 与四郎・「アハハッ変な顔〜」 文次郎・「おはえはぁ…(お前なぁ…)」 与四郎・「ほらっ」 笑ってくれよ、お前の笑顔が、大好きなんだ。 頬の手を離す。 与四郎・「留は悪い奴じゃねぇよ?」 文次郎・「知ってるっつーの、そんなんだったら雇わんわ、お前は俺の目利きを信じねぇのか」 与四郎・「いやぁ?」 やっと笑った文次郎に、与四郎の頬も緩む、料理人は笑顔が基本だ。 NEXT [back]/[next] |