06

幼馴染だからって全て知ってる訳じゃない





料理の師匠が言った言葉は、独立した今でも覚えている。

『料理人は台所の神様じゃ、命を作る糧になるものを差し出す。神様になるのはそれなりの覚悟とお客様を労る気持ち、それと優しさ…お前はそれが出来るか?』

なぁ、師匠、俺は、それが出来る人間にまでになっただろうか?


ゆっくり目を閉じて、それから開く。

文次郎・「あー…」


昨日は、確か……猫…じゃなかった、食満君を拾って、ウチに下宿させることになったんだっけ?布団の中でガサゴソとケータイを探ると、

文次郎・「あ゛!!」

与四郎を迎えに行く約束をしていたのだ。
到着時間9時、現在11時

文次郎・「やべぇぇ!!!」

メールボックスには与四郎からのメールが約30件
カチカチと見ると、一番最新のメールには

お前んちの玄関にもうついたわアホ(^^)

文次郎・「え…」

ちょ、待て待て!!隣の部屋を見ると昨日泊めたはずの食満君がいなかった。

文次郎・「まさか…」

文次郎が凄まじい音を立ててリビングまで走る。
そこには

与四郎・「よぉ寝坊助、おはよーさん」
留三郎・「おはようございます」

キッチンにて朝ご飯を作る久々の再会の幼なじみと、呑気にそのご飯を食べる昨日拾った男がいた。

文次郎・「……は?」
留三郎・「こら与四郎、潮江さんびっくりしてんじゃん」
与四郎・「アホか、ビックリしたのはオラだ」

何故か仲の良さそうな二人に文次郎が頭を抱えたくなる。


与四郎・「あんな文次郎、留はオラの従兄弟」
留三郎・「与四郎と同い年です」
文次郎・「あっそうなんだへぇ……んな訳あるかぁぁぁ!!!!」

思わず机を叩く文次郎

与四郎・「文次郎のノリツッコミ久々〜」

ケラケラ笑う与四郎

文次郎・「どうりで似てると思ったらぁ〜」
与四郎・「ただいま」
文次郎・「……おかえり」

幼なじみだって知らないことも有る。


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