彼は何も分かっていない(文次郎単体)
2011/01/21 15:00

※二重人格っぽい文次郎 好き嫌いが分かれるかも 管理人は原作の文次郎が大好きです ネガティブっぽい文次郎



自分を作ってしまうし、作ることが得意だ。

それは潮江文次郎の暑苦しさやギンギンと喧しく、委員会で後輩を巻き込むところとは別の次元と言うか…切り替えの問題と言うか…。
とにかく、ある一定の場で発動する俺の感情、俺の個性、つまり『作った俺』は、俺から考えてもかなり傍迷惑だ。

だから、黙ってれば…とか言われるんだろうか…?

まず、平素なら俺は割と静かな方だと自負する。
ギンギン文次郎発動はもはや無意識なので、俺のどこが?何て思われるかも知れないが、奇行を行うその心は、『あぁ、また出て来やがっためんどくせー』とか『鉄粉食うのも慣れてきたなー、あーでも、やっぱクソ不味いなー』とな『あ、明日筆記試験じゃねぇか、んな体動かしてる場合じゃねぇ』など、思ってることは全く別だったりする。

俺の周りの奴らを良く考えてくれ、俺は一年から、あの個性派揃いの中で生きてきたのだ。あいつらについて行く。いや、それ以上に追い越すにはどうしたら良いか考えた幼い俺が思いついたのが『自らの性格を歪めてみる』ことだった。

あまりにもそれを長く続けたせいか、もはや『本来の俺』の人柄を忘れがちだが、俺は、そう。本来は静かな方が好きだし、出来るなら無茶はしたくない、ケンカも嫌いな、そういう奴だったと思う。見るからに筋肉馬鹿な俺が図書室から本を借りるのだって、本来は読み漁りたいくらい読書が好きだからだ。

俺が性格を歪ませようと決意したのは確か二年の序盤あたりだったが、はたして今のあいつら…六年は、これが作った俺だと気付いているだろうか…?
長次辺りは気付くかなぁ…。後は…アイツ、食満は…気付いているのかもしれない。


時折、お前が怖いとか恐ろしいとか言われる。そりゃそうさ、お前らが見てるのは俺じゃねぇし。薄気味悪いだろうし。

ちょっと、鉢屋に似ているかもしれないが、でも、俺は変装の類が秀でている訳でもなし、外面の仮面作んのが上手くなっただけだ。

仮面を被った計算尽くしの日々は酷く退屈で億劫だ。最初は周りについて行く為だけのものだったが…。

疲れた…と思った。
俺は俺であるけれど、本来の俺などつまらないのではないか、とも最近は思いはじめた。本来の文次郎が無くても、作られた文次郎は、俺の中で色んな設定をつけながら、大人になる。いっそのこと、今こうやって思考をめぐらす俺自信がいなくなり、作られた俺が、自信満々にこの学園を闊歩すれば良い。俺と変われ。

「他人に合わせなければ、置いて行かれると思いこんで、一人が怖い臆病もので、自分自信に自信も持てぬ潮江文次郎など、さっさと消えれば良い」

将来の夢は、忍術学園の学園長、いやいや違う。それは俺が作った潮江文次郎の夢だ。口先だけの、いや、でももしかしたら、俺の本当の夢かもしれなくて、でも、外面の文次郎のために最初に考えた『設定』だ。俺の夢は…。

「何なんだろう…」

考えても考えても、その答えは何も出なかった。

「まぁ、良いか…」

そう思えてしまうぐらい。俺は俺自信が本当にどうでも良い。
けど、まぁでも、本当の自分が死滅する前に、一度くらいは、自分を見て欲しかったかなぁと口惜しく感じる。


さてさて、今から目を閉じたら、本来の潮江文次郎は消滅。うん、よし、決めた。

今から十数えよう。

「いーち、にーい、さーん」

きっと、楽になる。傍迷惑だけど、理不尽だけど、どこか不器用で、優しい俺の文次郎に、全部を任せれば。

「しーい、ごー、ろーく」

なぁ、そうだろう?頼んだぜ『文次郎』

「ななー、はちー、きゅー」


ふいに、俺が作ったはずの文次郎が

『バカタレ…っ』

と呟いたような気がした。


あぁ、うん、まぁ、確かに、馬鹿だよなぁ…。



彼は何も分かっていない
そうやって作られた自分だって、自分の一部であることも、彼の本質を好いている者がいることも、何もかも、分かってはいないのだ。


『分かってんなら、自分を消滅させるようなことすんじゃねぇよ』

再び目を開いたとき、潮江文次郎の本質は、まるで頑丈に檻を掛け、そこから一歩も出たくないと言うように、潮江文次郎の内に閉じこもった。

ポカリと開いた自分自身の心に、作られた潮江は、苦い溜め息を零し、内では、叫ぶのだ。

−誰か、早く『コイツ』に気付いて、助けてやってくれ





end

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二重人格のような潮江文次郎のお話。本質の文次郎は物静かで、読書好きで、争い事嫌いで、弱気で、ちょっと面倒くさがりな、でも優しい人です。他の六年に追いつけるように、と思って、どんな奴にしようかと作られたのが、普段の文次郎=作られた文次郎と言う訳です。作られた文次郎は本質の文次郎を叱ったり、まるで兄のような存在だったりします。好き嫌いが別れそうな話だなーと書いた本人も思いますが、管理人は原作文次郎が一番好きです。ちなみに、この話、続きます。本質の文次郎が消えたままでは、あまりに後味が悪すぎるので…。
さて、この話を読んでくださった方は、本質のネガティブ文次郎と、作られたポジティブ文次郎。どちから好きでしょうか?
ハッピーエンドにかならずします!!



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