Gun gun gun!!(文留)
2011/01/25 13:25

※マフィアパロ




男は、隈の酷い顔を歪ませ、目の前にいる彼の最大の雇い主と目を合わせた


「ボス!!仕事してください!!」

キチッとスーツを着こなす男、潮江文次郎とは正反対に、ボスと呼ばれた男、食満留三郎は、だらーんと机に突っ伏した

「もうやだこれー、文次郎やってくれ」
「無理です却下します」


無表情での高速の拒否に、留三郎は苦笑する。この右腕は出来る男だが、出来すぎているのも困るものだ。

「ケチだな」
「もともとケチなんで」

さらに言えば可愛げがない。

「俺は出来るなら、可愛い年下の部下がよかった」
「俺は出来るなら、金を溜め込まない、経営管理がしっかり出来るボスがよかったですね」

シレッと言い放つ文次郎を留三郎はジトーッと睨むが、文次郎は気にした様子も無い。

しかし、そんな留三郎の視線に耐えられなくなったのか、溜め息をつき、文次郎は留三郎が嫌だと放り投げた仕事の書類をテキパキと見て片付けていった。
何だかんだと、文次郎は留三郎に甘いのだ。


「文次郎は、何で俺の部下なんだよ?」
「…………ノリと成り行き?」


文次郎は眉間にシワを寄せて、初めて出会ったときの回想をしているようだった。
この文次郎、実は留三郎よりもマフィア業界では名の知れた強者である。

"銃使いの潮江文次郎"

名の通りに体中にいくつかの拳銃を所持し、その的中率と、拳銃を扱う手さばきが神がかっている。拳銃も、まるでこの男に扱われることを喜ぶように、鈍く黒く光って見える。

その文次郎の『ボス』と言うことで、そこまで名のあるマフィアではなかった留三郎とその組は、マフィア界の中で名を上げてしまっていた。

文次郎は留三郎をジッと見つめた。

「ボスが俺に言ったんでしょう?」
「「仲間が大事だから、誰も死なせたくないから、だからお前が欲しい。お前の力を俺の為に使え」」

留三郎が文次郎の台詞に声を合わせると、文次郎は肩をすくめた

「今までは俺を幹部に、だの、ボスに、だの、下の者を気づかうような発言をするボスはいなかったんで………」


そう、この男だと思ったのだ。
出会いは、拳銃で負傷した文次郎を、留三郎が助けたことから始まった。留三郎は執拗に文次郎を、自らのファミリーに誘ったが、文次郎はそれを迷惑に思っていた。

そう、初めは、認めていなかった。

だが、留三郎と言うボスは今まで出会ったどんなマフィアより、文次郎の心に自然に踏み込んで、文次郎がどんなに彼を傷つける言葉を吐いても、それでも文次郎の腕を引いて、文次郎に笑いかけた。

力もそれほど有るわけでは無い。言ってしまえば、甘い考えの、それ程地位がある訳では無いこの男を。

ただ、けれど、自らのファミリーを思うこのボスの、穏やかだが、意志の強い瞳に、絆され、惹かれた。

あぁ、そうか。

この男こそ、俺の『主』だ。

それは完全に、文次郎が留三郎に惚れだた瞬間だった。


胸が熱くなるようなその時の出来事を、文次郎が心の中で、どこか暖かい気分で思い出し、辺りはどこか穏やかな空気に包まれる。

留三郎は笑って、文次郎は微笑んだ。



しかし、穏やかな空気は、空を切る音で遮断される。

文次郎が素早く拳銃を取り出し、引き金を引く、

ドォォォンッ!!!!


留三郎に向かっていた拳銃の弾は、文次郎の弾によって弾き返され、爆発した。
それを横目で見ていた留三郎は、近々頻繁になってきた自らへの攻撃に、若干引きつった笑顔を浮かべつつ。

「………相変わらず、凄い腕前で、右腕殿」
「誉めていただき光栄です。主殿」

軽く冗談を織り交ぜた言葉に、文次郎は拳銃をしまいながら、軽く笑って留三郎の言葉に答え、無線機を取り出した。

「俺だ、何故この部屋に敵の銃弾が来るんだ!!警備は金掛かってもしっかりしろっつっただろうが、あぁ!?俺がいなかったらボスは撃たれてお陀仏だ!!」

元がそれほど地位があった訳では無いマフィアのファミリーだ。警戒心は一般人よりはあるだろうが、それでも、留三郎のファミリーは、マフィアの中でも極端に警戒心が薄い。しかも、警備に費やす経費が極端に少ないことに、文次郎は苛立っていた。

今度からは経費の管理も俺がやろう。と密かに決意しつつ。

しばらく警備担当だった部下をガミガミと話し合いを続けると、文次郎は留三郎を抱き上げた。


「なっ!!?」
「ここは危険ですので、安全なところに移っていただきます」

文次郎が走り出したと同時に、先ほどまでいた仕事場は銃弾が飛び交い破壊される。

ちなみに、この仕事場、高級スイートホテルやマンションの最上階のような作りになっていて、元々文次郎自身の所有物であり、見つかりやすい場所ではあるが、とても値段が掛かっていた。

文次郎の金で家賃が払われているこの場所だが、文次郎としては無いほうが、ファミリーの為に金を使えると考えている。だが、留三郎は他人の金を使うのを好まない為、じゃぁせめてこの部屋を好きに使ってくれと言った所、留三郎専用の仕事場となったのだった。

留三郎は仕事場が破壊されていくのを遠目に見ながら、自分を抱える文次郎を見て、まだ見ぬ敵に心の中で合掌した。

文次郎の額から青筋がビキビキと出ていたからである。

「家賃月二百万のボスの仕事場…」

そんなにすんの!!?と留三郎が心の中で悲鳴をあげたが、文次郎はと言うと、ブツブツと呟きながら、留三郎を抱えていた両腕を片腕にし、留三郎には傷をつけないようにもう一度抱え上げ、

懐からガシャンッとマシンガンを取り出した。

「テメェら…」

そのまま器用に、走りながら、敵側に標準を定め、

「ふざけんじゃねぇぇぇ!!!!!!!!!」

マシンガンを放った。
ガガガガガガガッと言う鈍い音が辺り一面に広がり、文次郎は自らで己の仕事場を完全に破壊してしまった。

それを見ながら、新しい仕事場は文次郎になるだけ金を払わせない場所にしようと心の中で誓う留三郎だった。


Gun gun gun!!


これは、それ程地位も無いが、部下からの信頼は暑いマフィアの"ボス"と、ボスに命を救われ、彼にはとことん甘い"銃使い"の、銃弾交わる世界の物語である。


end



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前サイトのネタ帳に書いていたネタを加筆修正した作品です。
一回はやっておきたいよね、マフィアって、と言う訳で前サイトでも気に入っていたお話だったので、ついつい此方に引っ張って来てしまいました。(^_^;)
内容は結構変わったと思います。敬語文次郎萌え!!



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