ストーカーの歪み愛(現代パロ:文留)
2010/09/28 18:04
※続編を書く予定あり、文次郎や留三郎が結構気持ち悪いので注意
ストーカーの歪み愛とあるマンションの最上階一室。そこに、俺の宝物たちはある。ゴミだの何だと言われようと愛する彼が触れたものは全て残して起きたいと思うのだ。
自慢じゃないか、かなりの金持ちでもある。俺は、この一室を『宝箱』と呼んで大事に大事に保管している。
鍵を挿してドアノブをガチャリと回す。そこには、普通の奴らが見たら、ただのゴミ屋敷と言えるような光景が広がっていた。
「…我ながら、これはやべぇかもなぁ…」
そうは思っていても止められないのが人間の性だ。俺はこの収集をやめられない。
「せめて、ゴミ系は捨てるか…っ」
本当は嫌だが、物凄く嫌だがっ!!ここがさらに、ゴミ屋敷と化して、隣人である彼に臭いなどと言われれば俺は完全に彼に嫌われてしまうだろう。今だって、かなり妥協してもらっているのだから。
だから、しょうがない。彼、本人が俺といてくれるなら、変なこだわりは持っては行けないだろう。
「あぁ、留の食べかけのスナック菓子、もうカビ出てる…」
何で食べ物って奴は永久保存出来ないんだろうか…。俺はゴミ袋を片手に盛大に溜め息をついた。
俺の名前は潮江文次郎。大川大学、理数系の学部に所属する大学生だ。ちなみに、株をやっていて、現在それで大成功を収めている。
世間的にみても、普通の大学生、それか、顔つきが老けて見えるので、30代のオッサンってところか…とにかく大金持ちとかそう言うのを除けば結構普通であると思う。
あえて一つの変な所をあげるとすれな…。
「あ、潮江」
「留!!」
「だぁぁ!!抱きつくなバカ!!」
ゴミを捨てようと、『宝箱』の中から出ると、隣から、愛しい彼が姿を表した。
彼の名前は食満留三郎、同じ大学の、文学部に所属する同い年の学生。俺の思い人であり、宝箱の中は全て彼のもので溢れ返っている。
俺は彼が大好きで、大好きで堪らない。最初は俺がしつこく纏わりついて、避けられたり、嫌われたりもしたのだが、現在では、彼にも若干諦めが入ったのか、抱きついても怒られないぐらいに成長した。
何でか、留には俺がしつこい、ストーカーだとバレているのだが、その後の変化はとくに無い。留三郎が何かもう本当に諦めてしまったのだ。
いまでは、友人と言う段階なのかも知れない。
いつかは恋愛になってくれないかなぁと、その機会を狙っていたりするのだが…。
そんな訳で、今日も、抱きついても怒らなくなった留三郎にギュゥと遠慮無しに抱きつき、慌てる留三郎の全身の匂いや、体の形を堪能すると、俺は留三郎を解放した。
「…」
「…?」
「お前さぁ、何でそう挨拶が外国人じみてるの?」
「別に誰にでもやる訳じゃねぇよ?留にだから、やるんだ」
「……っまえ、ぬけぬけと恥ずかしいことを…」
「?」
何故か顔を赤らめた留三郎の反応に俺は、何故、留三郎がそんなに赤くなっているのか良く分からず。時計を見ると、もう大学の講義が始まりそうである。俺は急いで留三郎の手を引いた。
「へ?」
「留、そろそろ行かないと遅刻だぞ」
「おっおう」
ちなみに、留三郎は俺がストーカーであるのを理解しているのと、同時に、俺は部屋を二つ持っていることを知っている。本人は何故、自分の隣の家に、俺が部屋を借り、しかも二つも部屋を借りているのか、感づいているのかも知れない。
たまに、着替えてるところを隠し撮りしようとすると睨まれるすい…。
でも、俺はあえてそれを言うこともしないし、留三郎も俺にそれを言うことも無い。
だから、2人は今日も今までどおり、仲の良い友人のように2人で大学に行くのだ。
何故か2人で手を繋いで…抵抗もされないし、だから俺も何も言わない。
大学の投稿時間のほのぼのした空気が、俺の歪んでいる愛情を、普通の愛情に変換してくれているような気もした。
「なぁ、留、俺って変かな?」
「何が…?」
「だって俺お前のストーカーだぞ?」
「あぁ、そう言えば、そうだったな」
「そういえばって…なぁ」
そう言うと、繋いだ手を留三郎がギュっと握り返してきた。
「変な奴、普通ストーカーってもっと、影で行動したり、ターゲットとあんまり接近出来ない奴がやるんだろう?お前は俺とこんな近くで話してるし、バレバレじゃねぇか、しかもストーカーであることを気にするストーカーって何だし」
ケラケラ笑う留三郎を見て、俺は拍子抜けしてしまった。
「でも、文次郎がちゃんと告白してくれるまで、俺は何もしねぇから」
「……へ?」
「だから、いつまでも隠れてねぇで、早くしろーってこと、自慢じゃねぇが俺はモテるからな、でも、今のところは…全部お前にくれてやるよ」
そう言って、留三郎を俺と繋いでいた手を離して、走り去っていってしまった。
「……そこまで言ったんだから、今言わせてくれよ…」
こうして今日も、俺と彼は、奇妙で歪んだ愛情の中で生きている。
そして俺は、
彼の
『本来の姿』
には気付かない。
「ただいま〜、文次郎っと、あ、でも、もうすぐお前らは必要無くなるかも、なぁ、今日、告白しちゃったぜ、俺、脈有りだ。絶対。やっと」
留三郎の家では無い。どこか別の部屋、飾りたてられた。
文次郎の「写真」「写真」
使い捨てのセーターから、昨日使ったゴミまで、全て、全部、全部。
「『本物』が手に入りそうだ」
ニヤリと笑った彼は、お手製の文次郎の形をした縫いぐるみを抱きしめ、ニヤニヤと笑う。
「あ、でも写真はやっぱり捨てないで置こう。これからもコレクション、いっぱい、いーっぱい増やすからさ」
歪んだ愛情を多く持っていたのは、果たしてどちらだったのか。
幸せに向かうはずである恋は、歪みすぎてどこかおかしかった。
「なぁ留三郎」
「なぁ文次郎」
「「好きだよ、お前の全部を俺にくれよ」」
next? ストーカーの歪み愛end
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