自己紹介
切嗣は少女と共同戦線を張ることにした。 勿論信頼はしていないし、全てを信用している訳ではない。 けれど彼は思ったのだ。 彼女となら、自分の望みを叶えられるかもしれない。 故に今現在行動を共にしている。 そして彼は、少女と共にアインツベルン城へと向かう道中、思い出したように声を上げた。
「そういえば、君の名前は?」 『あ、言ってなかったね。初めまして、私は龍華。#天神#龍華だよ。貴方の名前は?』 「初めまして、衛宮切嗣だ」
切嗣が名乗ると彼女は彼の名を反復し、満足そうに頷いて微笑んだ。 無邪気な笑みが子供のようで、自然と切嗣の表情も柔らかくなる。
『ふーん…。中々良い名前だね。大事にすると良いよ、名前は大切なもので、呪だから』 「呪、か…。難しいことを言うね、龍華は」 『そう?昔は当たり前のことだったんだけどなー』
首を傾げつつ言う姿は愛らしく子供のようだが、切嗣から見て彼女は15歳前後のように思えた。 直接彼が聞くと、その予想は当たりで16歳だと龍華は言う。
『年齢なんてあんまり関係ないんだけどね』 「どうしてだい?」 『魔術師…特に魔力の高い魔術師は、肉体年齢が止まってしまうことがあるから。私も一応その部類かな』
そういった類の話は切嗣も聞いたことがあった。 しかし肉体年齢が止まるほどの魔術師はそう多くなく、彼自身それを見たのは初めてだったので目を見開いた。 そういったものを見れるのは一握りの人間だけで、まさか自分がお目にかかれるとは思っていなかったからだ。 切嗣の様子を見て恥ずかしげに苦笑した龍華は、もう眼前まで迫っている大きな城を見て、表情をころころ変えて感嘆の声を上げた。
『凄い!こんなに大きな城久々に見た!切嗣ここに住んでるの!?』 「一応ね。ここは寒いし、中でゆっくり話そうか」 『ココア!』 「はいはい」
飲み物のチョイスが子供のようだと切嗣は笑って龍華をアインツベルン城へ招いた。 珍しそうに歩きながら辺りを見回す龍華を窘めてメイドに飲み物を入れるよう頼み、彼女と共に妻の待つ部屋へと向かう。 その間もずっときょろきょろと調度品を見る龍華の行動は本当に子供のようだと笑いながら。 それを見た龍華は柳眉を寄せて頬を膨らませた。
『切嗣、笑いすぎ』 「ごめんごめん。あまりに子供っぽかったから、つい…」 『つい、じゃないよ。笑いながら言われても反省を感じないんだからね』
拗ねたようにそっぽを向いて言う龍華にまた笑って、切嗣は再び謝った。 何度かそうすると彼女はしょうがないとでも言う風に笑う。 その頃にはもう、切嗣の妻であるアイリスフィールの部屋の前に着いていた。
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