神の反撃



太ももから流れる血は多く、無くなる度に龍華の顔色を悪くさせる。
しかしそれを気にせず彼女は笑い、とある名を口にした。

『死神の大鎌(ハデス)!』

それは自らの愛する武器の名であり、部下の名。
名を呼んだ途端光が龍華の頭上に溢れ、それは徐々に失われて代わりに大きな鎌の形を象っていく。
そしてそれは完全に形を成し、まるで意思を持つかのようにギルガメッシュに襲いかかった。

「体の自由を失っても尚抵抗するか!」
『当然!ここで諦めたら神の名が廃る!』

死神の名を持つ鎌を自らの意思で操り、その隙にまた別の能力を使う。
体にしっかりと鎖が巻き付いているというのなら、体のサイズを小さくすれば抜けられる。
そう考えた#名前#は、己の身体年齢を操作して5歳程度に縮めた。
そうすることによって簡単に鎖から抜け出し、体の年齢を戻す。

『さあギルガメッシュ。私直々に反撃してやるから、聖杯戦争から離脱しろ!』
「…貴様も参加していたのか。ならば尚更引くわけにはいかぬ!」

銀の神が死神の大鎌を構え、金の王が王の財宝から数多の武器を出す。
神が不敵に笑った瞬間、双方が動いた。
放たれる宝具を弾いて金属音が鳴り響く。
龍華は酷く愉しそうに笑い、逆にギルガメッシュは忌々しげに眉をしかめた。

『ギル、私と喧嘩してギルが勝ったことあった?』
「…黙れ」
『口ても、拳でも、剣を交えても、ギルが一度でも勝ったことってあったっけ?』
「……黙れ」
『一生懸命頑張ってたけど、なかったよね、ギル』
「黙れ!貴様が、我が朋友エルキドゥを殺した貴様が、我をその名で呼ぶな!!」

憎しみに溢れた、けれどどこか苦しそうなギルガメッシュの声にまた笑う龍華。
その笑みは少しばかり悲しみを含んでいた。

『全く…。そんなのだから、エルが心残りがあるってギルを心配するんじゃん』
「………っ!?」
『結構戦ったし、私もまあ、用事が出来たし。これで終わりにしよう、ギル』

そう言って薄く笑った龍華の体は薄くなり、徐々に霊体化していく。
それを見て目を見開いたギルガメッシュは逃さないとでも言うように手を伸ばした。

「待て!エルキドゥに会ったのか!?」
『内緒。素直にならないギルには教えてあげないから』

必死に龍華を逃すまいとするギルガメッシュ。
そんな彼の頭に消えかけた手を伸ばす龍華は、優しさに満ちた笑顔でそのまま頭を撫でる。
そしてそのまま、彼女は消えた。
それと同時にギルガメッシュの足元に見覚えのある指輪が落ちてきた。
それは忘れはしない朋友のもので、己が嫌悪する女が渡した物。
何か罠でもあるのやも、と思ったが、彼は捨てることが出来ず拾い上げて指に通した。
指に嵌まることはないだろうと思っていたそれはすんなりギルガメッシュの指に収まり、輝く。
それを何とも言えない顔で見つめていたギルガメッシュも、先程戦っていた神のように空気の中に溶けていった。



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