幸運Eと幸運Ex



ディルムッドと少し話をした龍華は、改めて思うことがあった。
それは幸運値が低すぎる事。
マスターは態度が冷たいようだし、その婚約者はディルムッドに惚れているようだということを知ったのだ。
まさに昼ドラ。
昼ドランサーだ、と彼女は思った。
けれど決して言葉には出さない。
主を悪く言えば彼は怒るだろうと分かっていたからだ。

『それじゃあ私はそろそろ帰るね』
「あぁ。俺もそろそろ帰らねば。遅くなると主に怒られる」

龍華が腕時計を確認しながら言うと、隣のディルムッドもそう言った。
彼の言葉がまるで門限を破ってしまいそうな子供のようで、龍華はクスクス笑ってしまう。
それを不思議そうに見つつも急いでいるのか彼は霊体化し始め、目を細めて口を開いた。

「今日は楽しかった。ありがとう」
『こちらこそ』

それに満面の笑みで龍華は返し、消えゆく最後までその場から動かなかった。
ディルムッドが傍に居なくなったのを気配で感じ、彼女は目を閉じてため息を吐く。

『まったく、次会うときは敵同士だというのに、暢気だなあ…』

そういや、騎士は仲良くっても戦うんだっけ?
と、独り言を溢しつつ道を歩く。
その間も彼女はディルムッドの気配を追う事は忘れなかった。

どれだけ仲良くなろうとも。
友人であろうとも。
親友であろうとも。
恋人であろうとも。
目的の為ならそれら全てを排除する事が出来る。
天神龍華はそういう者だった。

『ん。ランサー陣営の基地補足。あの位置は、ホテルかー。しかも中々の高級ホテル』

婚約者がいて、ホテルに住んでいて、金持ち。
龍華はこの三つからマスターは大体把握できた。
おそらくは、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
彼には婚約者ソラウがいて、外国に住んでいる為ホテルを取っていてもおかしくはない。
そして、アーチボルト家は栄えている。
さらに言えば他の参加者である遠坂時臣は遠坂邸にいる為違う。
間桐雁夜もまた然り、間桐邸にいるだろう。
言峰綺礼も聖堂協会にいる筈だ。
他の参加者は誰か分からないが、先程の三つの条件を満たすほどの人物であれば有名人で参加者だと知られているはずだ。
以上を総合して、ケイネスだと龍華は確信した。

『切嗣に電話して教えてあげようっと』

思わぬ情報に笑みを浮かべ、彼女は携帯電話を取り出すのであった。



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