儀式の手伝い



切嗣に言われるまま己の魔力を注ぎ魔方陣を描く龍華は、数分で完成させた。
そして己が手伝っていた者へ顔を向け、口を開く。

『切嗣、これでいい?言われたとおりやったけど』
「あぁ、十分だよ。あとは僕がやるから、休んでいてくれ」
『了解』

軽く頷いて近くの壁に背を預け、龍華は宝具を抱えるアイリスフィールのほうを見る。
彼女は不安を感じていながらも、期待の入り混じったような顔をしていた。
それに少し苦笑しながら龍華はアイリスフィールに近寄っていく。

『アイリ、緊張してる?』
「少し、ね」
『まあ、今から英霊を召喚するんだし気持ちは分かるよ。でもね、大丈夫』
「どうして?」

きょとんとしたあどけない表情で龍華を見るアイリスフィール。
それに龍華は再び笑うが、先程の苦笑とは何もかもが違った。
無邪気で悪戯を仕掛ける前の子供のような笑み。
それを目の前の色彩の似た存在に向け、龍華は軽く弾んだ声を出した。

『だって切嗣はもう聖杯に選ばれてるし、その証拠である令呪もある。魔方陣も間違いはないし、失敗する理由がない』
「そっか、そうよね。それに、貴女が手伝っているんだもの。失敗するはずないわよね」

アイリスフィールの表情から不安の色が取り除かれ、彼女の顔に明るい笑みが宿った。
それと同時に切嗣も魔方陣を描き終わる。
伝説のアーサー王が現世に降り立つまで、あと数分。



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