要注意人物



銀髪を散らしたベッドの上で怠惰に過ごしていた龍華は扉の向こうに見知った気配を感じ飛び起きた。
既に魔力は回復し、いつもと同じように動くことが可能になっているようだ。

『どうぞー。居るんでしょ、切嗣?』
「流石龍華」

切嗣は苦笑しながらドアから顔を出した。
彼の手には茶色い封筒があり、それは厚みがあって少しばかり膨れている。
切嗣は封筒を渡し、龍華は不思議そうにして受け取って開いた。

「敵のデータだ。目を通しておいてくれ」
『分かった。そろそろ始まるんだね、聖杯戦争。アハト翁は、かの騎士王を呼び出してほしいんでしょ?』
「あぁ。今躍起になって聖遺物を探してるよ」

深くため息を吐きながら答える切嗣に苦笑して、書類に目を通していく龍華。
しかし、ペラペラと紙を捲っていた彼女の手が突然止まった。
それに載っていたのは、言峰綺礼という男の写真とデータ。
龍華は眉間に皺を寄せ、自分が今さっき見ていた紙を切嗣に見せた。

『この男、誰よりも警戒した方が良いと思うよ。勘だけど、多分、危険だ』
「龍華もやっぱりそう思うのか…」
『やっぱりってことは、切嗣も思ったの?』

切嗣は黙って頷き、肯定した。
実は彼とアイリスフィールは龍華に先んじて敵のデータを見ていた。
理由は彼女が魔力の使い過ぎで寝ていたからである。
その時に切嗣も龍華と同じことを考えていたのだ。

『……おかしなことになりそうだなぁ、今回の聖杯戦争は』

小さな龍華の呟きは、誰にも拾われず空気に溶けていった。



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