贈り物の代償



龍華は己の使える最大限の魔力を使用し、ある物に力を込めていた。
祈るように目を閉じ、己から消えていく魔力を感じながら。

『イリヤのは特別に力を込めたし、切嗣もアイリも十分にある。早速渡してこようかな』

大好きな親子に会うため、彼女は立ち上がって部屋を出た。
自分が危なげな足取りで歩いているのにも気付かず、手の中の贈り物をしっかり握り締めて。
自分の異変にも気付かず、異変がありながらも目的のために動く龍華はそれほどまでにある目的を果たしたかった。
贈り物を渡すこと、というのは半分程正解だが、半分違う。
龍華が込めた魔力は護りの力を帯びていた。
神たる龍華が込めた護りは絶対という言葉が相応しいほどに強固。
龍華以上の力を持つ者が破ろうとしない限り破れない護りであり、彼女以上に力を持つ者はこの世界にはいない。
よって、この世界の者は破るのは不可能なのだ。

『切嗣アイリイリヤー!持ってきたよー!切嗣は腕時計、アイリはブローチ、イリヤはブレスレットね!』
「あら素敵!ありがとう」
「毎日つけるよ」

デザインも渡す人物に合わせて作られた贈り物を受け取って喜ぶ二人に笑って、龍華はふらついた。
それを見て慌てた二人だったが、切嗣はすぐに反応して受け止める。
その体重の軽さに彼は目を見開いて、理由を腕の中の存在に問うた。

『えっと、魔力の使いすぎ、かな?それで虚弱状態になってるんだよね、多分。無尽蔵にある魔力を空っぽになるまで使ったんだから当然と言っちゃ当然なんだけど…』
「「馬鹿!」」

龍華は当然のごとく二人に心配を孕んだ声で怒鳴られた。
しかし龍華に声は届かない。
怒鳴られる一瞬前に、彼女は目を閉じて意識を強制的にシャットアウトさせられたからだ。
残るはただ、友人を心配する夫婦と、すやすや眠る冬の赤子のみ。



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