すらりと長い指が伸びる。そこから放たれたボールは綺麗な放物線を描いてゴールへと落ちた。
「相変わらずよく入るよなー」
「当たり前なのだよ、入らない訳がない」
「俺もそんぐらいの自信ほしいわー…」
 自信があるのは実力も兼ねているからだと分かってはいるし、だからといって恨むつもりもない。俺だって選手だ、努力する。それでも緑間とか、キセキの世代に追い付くとは思えないけど。
 近くに転がっていたボールを手に取ってバウンドさせる。緑間はこちらを一瞥し、またシュート練習に戻って黙々とシュートを撃つ。
 ーー飽きないよなあ、何回も何回も。
 ーーまあそれを飽きもせず眺めてる俺も大概だけど。
 黙々とシュートを撃つ緑間を眺める。あいつの指は綺麗で、その指から放たれたボールがゴールに入る。その流れは常に安定していて、でも綺麗で見惚れる。緑間が真っ直ぐ見つめるゴールが羨ましい、なんてたまに思ったりして。俺女々しすぎるだろ。
 でもほんと、かっこいいなあ真ちゃんって。
「高尾」
「うお、なに?真ちゃん」
「帰るぞ」
「…え、あ、うん」
 緑間は着替えるから待ってろ、というと部室へ行ってしまった。さっさと歩いていってしまう緑間の後ろ姿を見ながら、ふとボールが1つ転がっているのに気づく。片付け忘れたらしいそれを拾って体育倉庫の扉を開ける。あいつもうっかりしてんだな、と笑みを漏らしてカゴにボールを入れる。ふと思いついてもう一度ボールを取り出してそれを見つめた。
 ーーこれ、真ちゃんの指が。
 我ながら変態くさい。どんだけ俺あいつ好きなんだよ。そう自分を貶めながら自然にボールを抱きしめていた。ぎゅ、と。軽い気持ちで。
 なのに、なんだかすごいドキドキして。やばい。
「高尾」
「っ、真ちゃん!」
「何をしてる、帰るぞ」
 ボールを抱きしめることには何も言わず、緑間は俺に背を向ける。もしかして、気持ち悪いとか思われた?
「真、ちゃん…ごめ」
「何を謝る」
「え」
 俯きがちに謝ると、予想外の言葉が聞こえた。顔を上げると、緑間の背中があって更に上を見ると緑間の耳が見えた。それは暗い体育倉庫の中でもよく分かるくらい真っ赤に染まっていて。途端に、顔が熱くなる。
「真ちゃんそれ余計はずいんだけど…」
「五月蝿い、黙っていろ」
「へへ」
 ほんと真ちゃんってツンデレだよね、なんて言うといつも通り黙れって返ってきて。いつも通りなのに何故か嬉しくてニヤけた。



- ナノ -