静雄が臨也の弁当を再起不能にした後、静雄の話を聞いて僕は臨也の元へ向かった。
携帯で聞くとあっさり居場所を答えたので、始まる授業を1時間捨てて会いに行った。
空き教室の扉を開けると、窓際で机に腰掛けた臨也が空を見ていた。
見た目しおらしい姿に、でも僕は騙されない。
「君、知ってたでしょ」
「何をかなあ?新羅」
ほら、振り向いた臨也の顔はイラッとくる笑顔を浮かべている。
僕は溜息を吐いてその隣に座った。
「あんまり静雄をいじめるなよ。ほんと悪趣味だなあ」
「だってしょがないよ。シズちゃんだよ?たまに遊ぶくらいはいいじゃない」
臨也は手にした携帯をクルクルと玩びながらフンと鼻を鳴らした。
「さっき、なかなか弁当に手をつけないと思ったら、静雄を待ってたのか」
「うーん、まあね、予想では黙って見てるか、言おうかどうか悩む様を焦らしながら見てようと思ったんだけど」
「君が思ってるより正義感強いよ彼は」
「まさかそうくるかってね。しかも言い訳ひとつもなしとか、ほんとシズちゃんって…」
その先を臨也は言わなかった。
僕も言わなかった。
それはまだ起こったばかりで、お互い処理し切れてない感情もあるだろうと思った。
そうであって欲しい、と思った。
「臨也、ストーカーが誰かもう分かってるならそろそろいいでしょ。ここまでされて、まだ観察中って言ったら怒るよ」
「そうだなー、もうネタも充分そろったし、いいか。うん、今日お話してくるよ」
臨也はニタァと笑って携帯を開いた。
僕はそれから目をそらし空を見上げる。
「ねえ新羅、俺もう弁当やめるよ。飽きた」
携帯を操作しながら臨也がポツリと言った。
「そっか」
ストーカーに汚され、静雄に完膚なきまでにつぶされた弁当箱を思い出しながら僕は頷いた。
「でも最後にもう一回作ろうかな」
フフと臨也は楽しそうに笑う。
「シズちゃん食べてくれると思う?」
さすがにこれには頷けなかった。


はたして静雄は臨也の弁当を食べるか否か。そして静雄はいつ当たりを引くのか。という賭けに二つとも負け、高校生にしては大金をこの悪魔にせしめられることになるとは、この時の僕はまだ気付いていなかったのである、マル



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