vol.9

俺の家にある臨也小屋にはノミ蟲がいる。
ここでタダ飯食ってはブラブラしているだけと思いきや…掃除をしたり、洗濯をしたり。
部屋で何を良からぬ事をしてるんだかと放っていれば…上の草原への放牧に付いてきたり。
「居候だ」と宣言していた通り、たまに新宿に帰っている。

いや。「帰っている」と言うには何だかおかしい気がする。
以前は何週間という単位で新宿に帰っていたんだが、最近では長くてせいぜい3日だ。
そしていきなりここに来てはウチの食材を貪り食うのだ。

連絡を寄越せば良いのに、わざわざ野性動物まみれになりながら山を登ってくる。
こんなのしか無いの?あれが食べたかった、あれが残ってるはずだったと文句を言う。

「そんなの俺が居なくても良いだろ。そっちで処理しといてよ。」
仕事の事でも滅多に出掛けなくなった。

「あぁ…やっぱり美味しい。生き返った…」
「やっと眠れる…」
小さな呟きだが確かにそう言っていたのを聞いた。



これはもう、認めても良いんじゃないだろうか。
言いたくてたまらなかったあの言葉を、もう言っても良いんじゃないだろうか。
折りしも今夜は臨也が新宿へ行ってから3日目、きっともうすぐ何食わぬ顔でやって来る。

腹を括ろう。ひとつ頷き、台所へ向かった。





「やぁ、シズちゃん。生きてた?独りじゃ淋しいと思ってまた来てやっ「おかえり」

「…………えっ…?」

「…おかえり。…遅かったな。シチューだけ温め直すから待ってろ。」

「…えっ…何……シズちゃ…。」

「早く入れよ…つーか、テメェ獣臭ぇ!!先風呂だ、風呂!」


いつぞやのように臨也の胸倉を掴んで風呂に放り込んだ静雄はシチューを温めにかかる。
放心と悶絶を器用に繰り返してなかなか風呂場から出てこない臨也に焦れて
静雄が風呂場に乗り込むまであと…




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