「ナマエなんでこないの」

笑顔だけどなんか機嫌悪そうな人がやってきた。サブウェイマスターのクダリだ。

「ぼくずっと待ってた」
「ご、ごめん」
「なのにナマエ、来ない」
「うん、私弱すぎて、4両目くらいでもうズタボロでね……ほんとごめんクダリ」
「ナマエそもそもシングルトレインに乗ってたし」
「あ、うそ!?」
「あっちはノボリしか出ません!」

う、うわあい、笑顔なのに涙にじんでるぞこのでっかい子供!私より年上のくせに!

「知らなかったんだもん!とにかく勝たなきゃクダリに会えないわけだし……」
「シングルで勝ってもぼくいない」
「だから知らなかったんだって。ごめんね」
「やだ、許さない」
「ええ……じゃあもう来ないよ」
「もっといやだい!」

ぎゃんぎゃん喚かれるってこういうことか。後ろからしがみついてきたクダリはまさにワガママが通らず泣き落としにかかっている子供だった。なにすりゃ許してくれっかなあ。いっそ私も泣いてやろうか、うん、そうしよう。

「う、うう……」
「……?ナマエ……?」
「私もクダリに会おうと思って、頑張ったもん」
「な、ないてるの?」
「クダリが許さないって言うから」
「え、え、ぼくどうすればいい?」
「許してくれたら泣き止むよ」
「えっそれはいやだ!」

嫌なのかよ……。女の涙も通じないとはクダリ、強いな……。一体どうすれば。

「どうすればクダリは許してくれるの?」
「うわあナマエウソ泣きした!」
「ウソ泣きなもんか!こっちもマジ泣きだよ!じゃなくて、どうすれば許してくれるの!」
「今度は逆ギレ!」
「いいから教えろ!」

ここは押すしかない!とばかりに語気を強めてクダリに迫れば、ふうむと考えはじめる。よしよし、いい感じだぞ。

「じゃあナマエがこれからおうちにきてくれたら許す!」
「えっいいよ」
「わあい!それからご飯つくって、」
「それは面倒くさいな……」
「でね、いっしょにお風呂にはいって、」
「ええークダリ長風呂だから嫌だよ」
「いいの入るの。それでいっしょに映画みて」
「あれでしょ、ホラー系の映画でしょ」
「うん当たり前。あ、添い寝もしてね、そしたら許す」

ぺっかー!とこれまでにない笑顔で条件を出してきたクダリ。正直割りに合わない気がする。そもそも連勝しなきゃ会えない制度が鬼畜だし、今こうして会えてるんだから、とも思うのだが、それを言えばたちまち機嫌が悪くなるだろう。ならこの条件を飲んであげるしかないな。

「夜ご飯、簡単なものしか作れないよ。スパゲティとか」
「わーい。ぼくツナとキャベツのスパゲティが食べたい!」
「うわあお手軽だなクダリ」
「ぼくナマエにはわりと甘い」
「うそだぁ」

とても甘い条件ではなかった気がするけど、私もスパゲティが食べたくなってきた。早く帰って、ご飯作ろう。クダリが喜ぶといいな。

山盛りスパゲティ
110724


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