『あ、もしもし丸井?』
「この電話は現在使われておりません。番号をお確かめしなくていいので再度掛け直すことのないように今すぐ永遠の眠りにおつきください」
『あたしあたしー』
「あ、なに山田?わかったわかったこの間300円だろ?明日返すって」
『頼むからあたしの存在を認めて』
「…お前今何時か言ってみろ」
『午前3時を回りましたね』

携帯の向こうから聞こえる声の主に怒りを通り越した呆れの溜め息が漏れた。まじで信じらんねぇ。てかなんで起きたよ俺。気付かずに寝てればいいものを。

「俺明日朝練あんだよ…、まじで勘弁しろよな」
『あたしさ……、』
「なに」
『この間の数学のテストひどかったんだよね』
「お前そんなことでこんな時間に電話してくるとか本気でふざけんな」
『担任にもお母さんにもめっちゃ怒られた』
「数学で人の価値は決まらねぇから安心しろ」
『そうだよね!』
「そうそう。よし、じゃ、おやすみ」
『うん、おやすみー…、なわけあるか!あたしこんなことのために電話したんじゃないよ!』
「何なんだよお前!解決したろぃ!文句あんのか!」
『緊張してんだよ!察しろ!』
「意味わかんねぇ!」
『あたしはもっと大切なことがって…!』

その言葉の続きを待ってみるがあいつはあー、だとかうー、だとか唸ってばかり。何語だそれ。早くしろよ。てかここまで相手してやってる俺ってどんだけ優しいんだ泣ける。そうやってあいつがうんうん唸ってるうちに再び睡魔が俺へと襲ってくる。やべぇってそろそろ限界かも。

「……で、どうしたんだよ」
『…あ、あのね!』
「おー」
『なんか今すぐ言っておかなきゃいけない気がして、』
「なんだよ」
『居ても立ってもいられなくて』
「ははっ、なに、告白?」
『うん』

ほんの冗談のつもりですぐにあいつから自意識過剰!と罵られることを予想していた俺は開いた口が塞がらないまま空気を食う羽目になった。え、だってあいつ今うんって。え、あれ、は?

『好き』

それだけだから!おやすみ!と乱暴に言葉を投げつけてきたと思ったら俺が口を挟む隙もなく通話はブチッと一方的に終了した。携帯からは通話終了を告げる機械音しか聞こえなくなり、半分眠りの世界に引きずり込まれていたはずの意識が一気に覚醒していくのがわかった。睡魔の手がどんどん遠のいていくのと反比例して俺の頭は冴えていって。あいつのさっきの言葉を何度も何度も繰り返してその意味が理解できた頃には眠気なんてどこかにぶっ飛んでいた。

どうしてくれんだ寝れるかバカヤロウ。

(120305)
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