「あ、」
「……あ」

年明けも目の前に迫ったこんな時間にコンビニに来る人があたし以外にいたなんて。

「なにしてん」
「え、買い物」
「見たらわかるわ」
「ああ、いや、なんかやっぱり年越しだし蕎麦食べたくなってさー。財前は何買いに来たの?」
「ブラックサンダー」
「ええええ、年越しに買うものじゃないよね」

そんな他愛ない会話をしながら自動ドアをくぐれば、先程までのむっとするような暖気から一変して肌を裂くような風が吹きつける。もはや風が冷たいというよりは痛いと言った方が正しい。これでも着こんできたつもりだったのに。どうやらあたしは12月下旬の冷え込みを完全になめてたらしい。ああ、早く帰って炬燵に入りたい。

「さっむー……、」
「ガキつか見たいわあ」
「あたしもー。あ、じゃああたしこっちだから」

バイバイ、と手を振って一歩踏み出そうとしたのと同時に腕を掴まれた。振り返れば呆れた表情の財前が「アホか」と溜め息混じりにぽとりと落とした。なに?なにがアホ?こんな時間にコンビニに行ったことが?え、ツッコミ遅くない?

「送る」

それだけ言った財前は掴んでいた腕を離してあたしの家の方向にさっさと歩き始めた。あたしは慌ててその背中を追いかける。送るって、さっきガキつか見たいって言ってたじゃん。あたしなんか送ってたら終わっちゃうかもしれないのに。数歩先の言葉足らずな背中に思わずきゅんとしてしまったのは内緒だ。

「あ、」
「ん?」
「年、越した」
「まじでか。あけましておめでとうございます」
「おん」
「財前」
「なんや」
「ありがとね」
「……おん」

(120101)
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