「卒業したくないよおおおお!」
「うるさいっすわ」

机に突っ伏しておいおいと泣くあたしを財前は冷たくあしらう。相変わらず冷たい。財前よりも1年早く生まれてしまったあたしは当然財前よりも1年早く卒業しなければならないわけで。あたしはこんなにも別れを惜しんでいるというのに財前はあたしとの別れなんて屁でもない感じだ。「むしろ嬉しいっすわ」って言ってる。背中が。

「で、先輩はわざわざ何しに来たんですか」
「卒アルのメッセージ書けコノヤロー!」
「人にもの頼む態度がそれですか」
「愛してる浮気すんなよ!って書いて」

当たり前のように財前はガン無視。あたし、めげない。いかにもダルそうな顔で渋々あたしの卒アルにメッセージを書き始める財前。白石は「そんなん財前だって寂しいに決まっとるやろ」なんて言ってたけど、あたしが今見てる財前の顔はどう見ても寂しそうじゃない。TSUTAYAでCDが全部貸し出し中になってたときの方が悲しそうな顔をしてた。あたし、めげない。

「むしろ先輩は何でそんな寂しいんすか」
「そんなの財前に会えないからに決まってるじゃん」
「会おうと思ったらいつでも会えるやないですか」
「え!」

それっていつでも会ってくれるってこと?うわあああ、財前がデレた!「口が滑りました」ちくしょう!あたし、めげない。

「だってさ、財前はあたしよりも上の高校受けるからあと4年は離れ離れじゃん!」
「大学は一緒になるみたいなことになってるのは何でや」
「財前がそんなに冷たいならあたし浮気するから!財前よりかっこいい彼氏作って財前に見せびらかしに行ってやるから!」
「俺、先輩の高校受けますよ」
「え!」
「滑り止めに」
「うがああああ!」

一体何なんださっきから。ツンデレにすらなってないけど!あたしと過ごした2年間は財前にとってはそんな程度のものだったのか。今こんなんだったらきっと2年後ぐらいにはあんた誰ですか?って言われるよきっと。何だか本当にこのまま財前と別れてしまいそうで、また涙腺が緩んだ。ああ、ダメだ。めげそう。

「何でそんな泣くんですか」
「財前の不感症がああああ!」
「そんな言葉大きい声で言わんといてください」
「うー……ぐすっ、」
「先輩は1年も待てんのですか」
「4年だ馬鹿野郎!」
「1年やろ」
「え、だって、」
「そんなん、俺やって離れたないし」

そう言いながら財前から返された卒アルに一際大きく書かれたメッセージがあたしの涙腺を崩壊させた。どうしてくれんだ。余計に離れたくなくなったわ馬鹿野郎。財前は「ぶっさいくな顔」と苦笑しながら袖で乱暴にあたしの涙を拭った。


待っとかな許さん


「財前があと1年早く生まれてきてたらよかったのに」

滲む視界に映る財前は少しだけ悲しそうに笑った。


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