朝、部室に行くとなまえが白石の胸倉を掴んでいた。え、何やこれ修羅場か。二人は俺が来たことに気付いてへんらしくて一瞥もせえへん。他に誰もおらん部室は静まり返っとって、心なしか空気がピリピリしとる。なまえは完全に怒りMAXで、メーターの針振りきれてしもとる。白石は状況が飲み込めてへん様子で困惑しとるわで、何やほんま、一体何があったんや。

「ほんとふざけるのも大概にしろよエクスタシー」

なまえがいつもより低い声で吐き捨てる。やばいんちゃうか、これ。止めた方がええんちゃうか、これ。俺が仲裁に入るか悩んでいたそのとき。

「何でそんなかっこいいんだよバカヤロウ!」

……え、ちょ、あれ?

「女の子にニヘニヘしてんなよ!女の子にチヤホヤされてエクスタシーかアァン?ほら言ってみろや!」
「エクスタシー……、」

ちょ、おま、白石!そんな元気ないエクスタシーは初めて聞いたぞ!てかちゃうやろ!そこは言うとおりになったらあかんやろ!

「女の子にニマニマした次はカブトムシか!まじお前意味わからん!」

それはわかる。俺も意味わからん。

「結局お前は誰が一番なんだよ!カブトムシか!あたしは哺乳類ですらないものに負けたのか!」
「そんなん決まっとるやろ」

あーやばいぞこれ。死亡フラグ立ったんちゃうか。でも今のは白石が悪いな。二、三発殴られて頭を冷やせ。

「お前に決まっとるやろ」

そっちかあああああ!あかん、俺今むっちゃ鳥肌たった。どこぞのドラマか。ようそんなことさらっと言えるな!白石のキザすぎる台詞になまえは唖然としている。まぁ妥当なリアクションやと思う。

「お前が一番や」

悪寒が俺の体中を駆け巡った。あかんあかん俺これ以上この場におったら気絶しそうや。ちょっとした吐き気に襲われながら部室をそっと出た。すると丁度財前がこっちに向かって来とった。

「今部室行かん方がええぞ」

財前は訝しげに「意味わかりませんわ」と言いながら俺の忠告を無視して魔窟の扉(部室)を開けた。3秒で帰ってきた財前は不愉快極まりないといった表情だった。ほんま、何が修羅場やねんっちゅー話や。


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