◎白石たち2年生


生温かい風が頬を撫でる。あたしはぐすっともう何回目かわからない嗚咽を漏らした。擦りすぎた目がヒリヒリと痛む。きっとあたしは今見てられない顔をしているんだろう。そんなあたしの顔を見て隣を歩いているこいつは可笑しそうに笑った。

「何でお前が泣くねん」
「何で笑ってんだよ死ね白石」
「無理」

なにこいつ何で笑ってんだ殴ってもいい?白石は「あーあ、擦るから目真っ赤やん」と苦笑いであたしの目尻あたりを優しく撫でる。いつもと変わらない様子の白石に苛々する。何で何で何で。

「……何で泣かないの!」
「え?」
「悔しくないの!?」

こんなこと聞かなくたってわかってる。きっと誰よりも白石が一番悔しいはずなんだ。誰よりも勝ちたいと思ってた白石が悔しくないはずがないんだ。なのに何でこいつ笑ってんだ。ヘラヘラしやがって腹立つなコノヤロー。

「何とか言ってみろアホ石!」
「や、」
「あ!?」
「……最悪や、」

ぽつりと呟いた白石。あたしの方が最悪だわ!と言おうとして顔を上げたけどやっぱりその言葉は呑み込んでおくことにした。

「折角我慢しとったのに」

白石が片手で顔を隠して俯くとそう零した。何で我慢なんかするの馬鹿じゃねぇの。「だって格好悪いやろ?」ってまた苦笑いした白石にとりあえずグーパンチをしておいた。どこが格好悪いの、そっちの白石の方がよっぽどかっこいいよ。先輩たちが泣いてたときも、さっきも、悔しくて悔しくて仕方ないくせにずっと涙を堪えていた白石を思うとどうしてもまた涙腺が緩くなってしまった。

「悔しくないわけないやん」

振り絞るように出された声は遠くから聞こえる河川敷で遊んでいる子どもの声に掻き消されてしまうほど弱々しくて、その肩は小さく震えていた。

「……めっちゃ悔しい、」

悔しくて当たり前だ。だってあんなに練習してたんだから。白石がどれだけ努力してきたのかを傍で見てきたから、白石には敵わないだろうけどあたしもめちゃくちゃ悔しい。あたしたちはまだこんなにも青いというのに、ふと見上げた夕陽はむかつくぐらいに綺麗な赤色だった。


(110117)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -