謙也に、彼女ができた。客観的視点から見て顔は中の下。不細工ではないけど可愛いとも言い難い。自分で言うのも何だけどあたしの方が確実に顔は上だ。特徴のない平凡な容姿は俗に言うイケメンな謙也と不釣り合いなのは誰の目から見ても明らか。でも謙也はそんなことまったく気にしてなんかいなくて、今も嬉しそうにあたしに彼女の話をペラペラと喋っている。何これ当て付け?罰ゲームか何か?何が悲しくて失恋の傷口抉られなきゃなんないの。頼むから誰かこいつの口を縫ってくれ。

あたしは謙也のことがずっと好きだった。あたしの方が絶対に謙也を好きだし釣り合う自信だってある。だってあんな子よりもずっとずっと前から謙也だけ見てきたんだから。釣り合うために必死に努力だってした。あたしの何があの子より劣ってるの?あたしには何が足りなかったの?誰か教えてよ。

負のオーラを纏うあたしにまったく気付いていない謙也はいまだその彼女の話を続けている。耳を塞いでしまいたかった。そしてヒステリックに叫び散らしてやりたい。ああ、もう心臓が痛い。

「…〜やってん!めっちゃ可愛いやろあいつ!」
「……あ、のさ」
「ん?」
「かなり普通だよね。謙也の…彼女、」

気付いたらそんなことを口走っていた。自分の言ったことを理解した途端に後悔がどっと押し寄せる。あたし何言ってんだろう。ほら、謙也だって引いてるじゃん。うわあああ、時間戻れよ。脳内が半ばパニックに陥っているあたしの隣で謙也は困ったように、でも少し恥ずかしそうに苦笑を漏らした。やめてよ、そんな顔。あたしがひたすら虚しくなるだろうが。

「顔で好きになったんとちゃうからなあ」

ああ、そうだった。そんな謙也だから、あたしはこんなに好きになったんじゃん。あたしは本当に呆れ返るぐらいの大馬鹿だ。

「そうだね」と答えたわたしは、ちゃんと笑えていただろうか。


(111202)
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