いなくなってしまった。あたしの前から、完全に。もう届かない、声も想いも温もりも。彼はいってしまった、あたしには届くはずがない場所へ。さよならも言わずに。戻ってくるって、言ったじゃない。大丈夫って、そう言って、笑ったじゃない。彼はいつだってそうだった。あたしには大丈夫しか言わない。弱さや辛さなんて、絶対見せてくれない。なんて薄情で、馬鹿で、優しい人。

あなたはそちらで元気にやっていますか?もう辛くはありませんか?痛くはありませんか?ちゃんと弱音を吐けていますか?また大丈夫だなんて意地を張って、笑ったりしていませんか?この想いはもうきっと、あなたに伝えることはできないのだろうけど。

あたしの気持ちを攫うように吹いた風は、彼のように柔らかく、優しい風だった。


哀しみを降らすその瞳がどうか
(笑っていてくれますように)


(110904)
彼女の為に泣いた
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