「短いねん」

はい、これだけで彼の言いたいことがわかったあなたは恐らくテレパシー的な超能力があるでしょう。すごいですね。きっと彼、一氏と仲良くなれると思います。ちなみに超能力なんかとは無縁のあたしははまったくわかりませんでした。わからないのが当たり前だと信じたい。頭の上にクエスチョンマークをいくつも浮かべるあたしを一氏は眉間に深い皺を寄せながら睨み付けている。

「短いねん」

あたしが聞き取れなかったと思ったのか、一氏は苛ついた様子を露にしながら先程よりも低い声で同じ言葉を繰り返した。でも何度聞こうが彼の言葉を理解することはできないと思う。まだポカーンとした顔をしているあたしに一氏の苛々はますます積もっていくばかり。一氏の怒りと比例してあたしの焦りも増えていく。やばくないかこの雰囲気。どうするよ。

「短い言うとるやろ!」

仏の顔も三度までというやつか(いや、一氏が仏はないか)とうとうプッツリきてしまったらしい一氏が怒りを爆発させて叫んだ。でもそんなにいきなりキレられても何に対して怒ってるのかわからないんだからどうしようもない。あまりの理不尽さに言葉をなくしていたあたしも反論するべく勇気を出して口を開いた。

「な、何が!いいい意味わかんないんだけど!」

あたしの反抗に一氏は更に機嫌を悪くしてただでさえ悪い目付きをより一層きつくしてあたしを睨む。しかしあたしも負けじと睨み返す。そんな数分間繰り広げられたバトルは一氏がふん、と顔を背けたことによって幕を閉じた。そして奴は回れ右をすると荒々しい足取りで教室を出ていってしまった。再び呆然とするあたしを責め立てるように教室のドアが大きな音を立てて力任せに閉められた。ほ、ほんとに何だったんだ。

「ユウくんご立腹やねぇ」
「痴話喧嘩は他所でやりぃや」

聞き慣れた声に振り返れば、いつからいたのか小春ちゃんと白石が呆れた様子で並んでいた。どうやら先程のあたしと一氏のやり取りを一部始終聞いていたらしい。白石はあたしを頭から爪先までじーっと見つめると「たしかになぁ…」と呟いた。白石の言葉に小春ちゃんも頷いている。なになに、何がどうしたの。

「ちょっと短いかもしれへんねぇ」

おいおい、この二人も一氏くんと同じこと言ってますよ。何だこれ流行ってんの。まったく意味がわからないまま二人を見つめていると、あたしの視線に気付いた小春ちゃんが苦笑しながらあたしのスカートを指差した。

「自分の彼女がそんな生足見せびらかしとったら気になるんも無理ないわ」

短い短いってあたしのスカートのことだったのか。男の子の考えることっていまいちわからないや。まぁとりあえずスカートの丈は少し長くしようと思いました。


脳みそだって宇宙だ


(110505)
にやり
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