「お前のことが好きや」

"今日隕石が落ちるらしい""今日学校休みらしいよ"これらは朝から友達に言われたことのほんの一部である。お前らは一体あたしをどれだけ馬鹿だと思ってるんだ。そう、今日はエイプリルフールなのだ。1年に1回、嘘をついても許される日。てかみんなあたしをどんだけ騙されやすい奴だと思ってるの。あたしがそんなアホらしい嘘を信じるバカだと思ってるの。ナチュラルに傷つくんですけど。もう騙されて堪るか。今日は誰も信じないとあたしは心に決めたんだ。だから今目の前で馬鹿馬鹿しい嘘をつく一氏にあたしは全力でガンを飛ばしている。

「ふざけんなよ」

あたしの言葉に一氏は一瞬驚いたように目を丸くした後、不愉快極まりないというように眉間に深い皺を寄せた。何だやんのかコラ。険悪なオーラを醸し出すあたしたちの間に沈黙が続く。何で怒ってんの意味わからん。怒りたいのはこっちだ。しばらく流れた沈黙は一氏の舌打ちによって破られた。てかちょ、舌打ちって何だこの野郎!

「死ね」

そう吐き捨てた一氏は踵を返してあたしから離れていく。え、なに今の。ぽかんと開いた口が塞がらない。何であたしが死ねとか言われなきゃいけないの。おかしいだろ。どう考えても暴言吐きたいのはこっちだろ。怒りMAXのオーラを振り撒きながら歩いていく一氏の背中を見ている内にふつふつと怒りが込み上げてきた。

「白々しいんだよ!質悪い嘘つくな!」

我慢できなくて一氏の背中に思いっ切り叫ぶと、怒りを露わにした般若のような顔の一氏が振り向いた。ちょ、ちょっとビビったじゃねぇか!怯んでたまるかと睨み返すと遠くに立つ一氏が「意味わからん」とぼやいたのがはっきり聞こえた。その台詞をそのままバットでお前に打ち返してやりたいわ。

「今日が何の日か言ってみろ!」

あたしが一氏のあれを信じたなんてことが知れたら一大事だ。きっとあたしは間違いなく今日の部活でネタにされるだろう。そんなのは真っ平御免。逆にあたしが一氏をネタにしてやる。みんなに笑い者にされればいいんだよ!

「知るか!」

お前のそのスカスカの脳みそどっかで取り替えてこい!と一氏が叫んだのがぼんやりと聞こえた気がした。ええええ、もしかして今日がエイプリルフールだってこと知らない?じゃあ何、あの告白は嘘じゃないとか?そんな馬鹿な。ドスドスと歩いていく一氏の背中をあたしは呆然としたまま見送った。


(110401)
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