今日は日直だったのでいつもより早めに登校したら、珍しく向日が教室にいた。まだ登校完了の時刻よりかなり早いので他に人はいない。向日は暇そうに頬杖をついたまま「はよー」とあたしに挨拶。どうやら今日は朝練がなかったみたいだ。じゃあ何で早く来たんだろ、と思ってふと黒板を見れば今日の日直のところにあたしと忍足の名前が書かれていた。ああ、なるほど。忍足について来たのか。

「忍足は?」
「なんか用があるとかで職員室行った」

ふーん、と返事をしてから鞄を机に置く。えっとたしか日直の仕事は黒板消しにごみ捨てに日誌にその他諸々。面倒臭いなと考えながらも暇だったので黒板を綺麗にすることにした。まぁ昨日の日直が掃除したから全然綺麗なんだけど。何も書かれていない黒板を消すという無意味な行動を繰り返していると向日が「そうえばさー」と口を開いた。

「黒板消しドアの隙間に挟んで悪戯したことない?」
「あー、あるある」
「あれ意外と面白いよな!」
「先生とかにやったり」
「それやった!」

まぁ今時引っ掛かる人もいないでしょー、と笑いながら黒板消しをクリーナーにセットしようとしたとき、向日に「待った!」と制止された。振り返れば正しく悪戯っ子のように笑っている向日。その目はとても楽しそうに輝いている。まさか。

「いやいや、忍足は引っ掛からないでしょ」
「そう思われてる侑士が引っ掛かったらおもしれーじゃん」

向日は軽くスキップしながら黒板消しをドアの隙間に挟んだ。「えー」と言いながらもあたしは向日を止めない。実はちょっとワクワクしていたりする。二人でドアの近くにしゃがんで意味もなく声を潜める。引っ掛かる忍足の姿を想像してひっそりと笑いが込み上げる。ドアを開けて頭を粉まみれにしている忍足。うわ、ダメだ笑える。隣の向日をちらりと見ると向日も口元が緩んでいた。

そのとき、やっと職員室から帰ってきた忍足の声と足音が聞こえてきた。向日と顔を見合わせて笑う。どんどん忍足が近付いてきているのがわかる。さぁ忍足ドアを開けろ!忍足を見ながら向日と爆笑する数秒先の未来が頭に浮かんだ。あれ、そういえば何で一人でいるはずの忍足の声が聞こえたんだろ?ふとそう思ったと同時に教室のドアが開けられた。

「おい、向………、」

まぁ今時引っ掛かる人もいないでしょー、ついさっきあたしが言った言葉が光の速さで頭を過った。そして頭に残ったのは"やっちまった"という後悔のみ。あたしと向日の目の前で頭を粉まみれにしていたのは忍足ではなく、俺様何様跡部様こと跡部だった。まさかの想定外、跡部が教室のドアを開けてしまったのだ。あたしたちの本当の標的は頭を真っ白にしている身代わりの後ろで爆笑していた。それはなんとも悔しいくらいにあたしが想像していた数秒先の未来と重なったのだった。


(110326)
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