「寒いいいいいいい」
「鳥肌パねえええええ」
「ナチュラルに歯がガチガチする!」
「真冬の海に来るとかただの気違いじゃ」
「じゃあ俺ら気違い集団じゃん」
「真冬の砂浜でランニングとか……どうかしてるぜ!」
「古いよ」
「お前ら黙って走らんか!」

とんでもない寒気を乗せた潮風が吹くたびに背筋が震える。真冬の砂浜でランニングとか寒すぎる。あー、鼻痛い。さっきから仁王が「こんなメニュー嫌じゃー」とかぼやいてるけど、俺だってこんなの嫌だからね。好きでこんな極寒の中をランニングしてないからね。

「あ!あんなところに赤也が!」
「ほんとじゃ!はよ助けんと!」
「先輩それはただのワカメです」

ついに嫌気が頂点に達したのか、それとも寒さで頭がおかしくなったのかブン太と仁王が海に浮かんでいるワカメをめがけて走り出した。ちなみに俺的にはきっと後者だと思う。てか後者に違いない。さっきまで寒い寒い言ってたくせにあいつらは真冬の海にばしゃばしゃ入っていった。キングオブ気違いは間違いなくお前らだ。むしろただのバカだ。そんなあいつらに向かって真田が隣で怒号を叫び散らしているが、完全に無視。

「赤也あああああ!」
「いつの間にこんな姿に…!」
「大丈夫だ、お前のことは一生忘れねぇ」
「お前は俺たちの心の中で生き続けるぜよ」
「先輩たちまじで1回死んでください!」

ワカメを抱えて「ちくしょう…!」とかやってるキングオブ気違いにキレた赤也が走っていく。そしてその後をなぜか真田が追いかけていった。バカ4人が真冬の海でぎゃーぎゃー騒いでる光景はなんて愚かなんだろう。

そろそろやめさせないとこっちが恥ずかしいので、仕方なくバカ4人のところへ向かう。

「おい、お前らやめろよ恥ずかしいだろ」

俺の親切な気遣いの言葉の食い込み際に突然何かがぶっ飛んできて、無防備な俺はその何かに巻き込まれてそのまま海へダイブ。

「何をするんだたわけがあああ!」
「それはこっちの台詞だよ真田」

キングオブ気違い共にぶっ飛ばされた真田が血の気の引いた顔でこちらを振り返った。キングオブ気違い共とワカメもこの世の終わりみたいな表情で俺を見つめている。

「そんなに海が好きなら沈めてあげようか」

俺が真田をぶっ飛ばしたのを合図に、キングオブ気違い共とワカメが全力で逃げ出した。もちろんそのあとを追いかける俺。俺から逃げられるとか本気で思ってるの?バカ?このときには海の冷たさなんて既に思考から除外されていた。

気が付けばみんな全身びっちゃびちゃで藻臭くなっていた。どうやら結局俺もあいつらもバカだったらしい。

「先輩たちのせいでびっちゃびちゃじゃないっすか!寒っ!」
「赤也まじもんのワカメじゃねえかぎゃははは!」
「ぎゃはははは!」

海水でぎしぎしになった髪を掻きあげる。ありえないくらい寒いし服からなにから全部ずぶ濡れだし最悪なはずだけど、なんだか妙に清々しい気分だった。こういうのも悪くはないと思っている俺はやっぱり結構重度のバカだ。肩を叩かれて振り向くと何の被害も被っていない柳が「風邪をひくぞ」と微笑んだ。

「みんなほんとバカだな」
「バカは死なないと治らないらしいぞ」
「じゃあ死ぬまでバカやろうか」

若いって素晴らしい。


若いって無敵アイテム


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にやり

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