*バレンタイン企画*
プレゼント



いつも通り自主トレを終えて寮に戻ると、ドアの前に小さな紙袋が置かれていた。
添えられたハートのメモを見て、それが雛美からのものだと気づいた。
そして今日がバレンタインだったことを思い出す。

「やっべ……」

会う約束してんだった、呟いたって謝りたい相手はここにいるはずもない。
中にはラッピングされたチョコとマフラー。
前に一度だけ欲しいと言ったことがある。

「細けェことまで覚えすぎじゃナァイ?」

マフラーを首に巻いて、ビアンキに再び跨った。



時計は23時45分。
もう寝てンだろうな、と開くはずもない窓を見つめる。
一回だけ、そう心に決めて電話をかけた。

「もしもし?」

ワンコールで聞こえた声は、涙まじりに聞こえた。
言葉に詰まる。何を言っても言い訳になんだろうな。

「靖友先輩?どうしたんですか?」
「悪かった」
「え?」
「雛美がくんの忘れて遠乗りしてた。悪ィ。」
「大丈夫です、気にしてない、です。」
「……泣いてたんだろ」
「いや、大丈夫ですから…」
「ンだよ、こなくて良かったのかよ」
「え!?」

窓から顔が覗く。
遠目でも泣いていたのがわかった。

「やっと目ぇ合ったな」
「え、どうしたんですか!?」
「会いにきちゃ悪ィかよ。」
「いや、そんなことはないですけど……」

電話越しなのがもどかしい。
顔もあんま見えねぇし。
匂いも嗅げねぇし。

「寒ィんだけど。入れてくんねぇの?」
「きょ、今日は親がいなくて」
「だからァ?」
「も、もう遅いですし」
「会いたかったのは俺だけかよ。」
「私だって会いたかったです……」

電話の向こうで嗚咽が聞こえる。
抱きしめてやりてぇのにそこにいたら手ぇ届かねぇだろ?
なぁ。

「雛美」
「はい……」
「マフラー、アンガトネェ。」
「あっ……」
「礼、してェんだけど。入れてくんねぇ?」

こくん、と頷くのが見えて、窓が閉められる。
今日はたっぷり甘やかしてやるから。
何でも言うこと聞いてやるから。
だからまずは思いっきり抱きしめさせろよ。
そんで来年も再来年もこの先ずっと一緒に過ごそうぜ。

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