誕生日2日前。

「黒田、あんまり小鳥遊とくっついて話さない方がいいぞ?」
「…?何でですか?」
「いやぁ、まぁ。噛み殺されねぇようにな!」

ある日突然、黒田は新開にそう諭された。
黒田が小鳥遊と話しているのはもちろん委員会のこともあるが、そのほとんどが荒北の話だった。
その新開の言葉に、黒田はある思いに行き着いた。
もしかしたら、上手く行くかもしれない。
そう思い、新開を呼び出してそれを確認することにした。

「呼び出してすんません。」
「いや、構わないさ。どうかしたのか?」
「その、荒北さんの好きなのって……小鳥遊ですか?」
「いやぁ、どうだったかなぁ。」

新開が目をそらしたのを黒田は見逃さなかった。
一歩近づいて、声を潜める。

「小鳥遊は、荒北さんが好きなんすよ。」

その言葉に新開の目が見開かれた。
そして途端に、嬉しそうな楽しそうな顔になる。

「それ本当か!」
「はい、だから小鳥遊は委員会とか口実つけてわざわざ部活中に俺んとこくるんすよ。」
「これは面白いことになりそうだな。」

明後日靖友の誕生日なんだよ、そう付け加えると黒田も何かを思いついたようだ。

「小鳥遊、荒北さんのことならいつでも呼び出せますよ。」
「よし、じゃぁ俺は寿一に部活休みの許可とプレゼントの用意をしておくよ。」




誕生日前日。

消灯を過ぎてからもゴソゴソと動き回る新開を不思議に思った東堂は、こっそり新開の部屋を訪ねた。

「一体こんな時間まで何をしているのだ?睡眠も大事だと何度言え……ば……。」

部屋に入ると、机に恥ずかしげもなくコンドームが置かれていた。
それに言葉を失った東堂をよそに、新開は楽しそうにそれに文字を書いている。

「一体何をしているのだ!!」
「尽八、声がでかいぜ。実はな……。」

そう言ってわけを話すと、東堂の目も輝き始めた。

「なぜそんな面白そうなことを俺に言わんのだ!」
「尽八しゃべっちまいそうだったからな。」

そう言う新開に少し憤慨しながらも、東堂は自室に戻ってたくさんのリボンを持ってきた。

「今までもらったプレゼントのものだが、繋げは使えるだろう!」

小鳥遊さんに巻きつけよう、そう言うと新開もニヤリと笑う。
こうして二人は、夜遅くまで準備をしていた。




誕生日当日。


朝5時にくるよう言われた小鳥遊は、寮の前で黒田にメールを打った。

「ついたよ、っと。」

昨日の夜、今日が荒北の誕生日だと知らされた小鳥遊はまだ企みを知らない。
ただお祝いするから朝の五時にここにこいと言われただけだった。
できる限りのおしゃれをして、頑張ってきたもののこんな時間で本当に良かったのかと不安になってきた。
すると、黒田からメールが届いた。

”新開さんが迎えに行きますから指示に従うこと。”

どういうことかよくわからずに待っていると、新開がやってきて手招きしている。
男子寮は女子が入れないはずだったのは、と思いつつも小鳥遊は招かれるままにその中へと入った。


新開につれられるまま、暗い一室に入った。
新開が静かに、とでも言うように口の前に指を立てた。
そして促されるままに座ると、目の前には荒北が寝ているではないか。
どういうことかわからずに立ち上がると、新開は小鳥遊の耳元でそっと囁いた。

「これ、靖友が起きたら渡しておいてくれないか。」

そう言って封筒を渡すと部屋を出て行ってしまった。
どうしていいのかわからず立ち尽くしていると、そっと誰かが入ってきた。
新開かと思われたその人物は東堂だった。
東堂はにっこりと笑って、新開と同じように口の前に指を立てた。
そして持ってきたリボンをぐるぐると小鳥遊に巻いて、満足そうに笑った。
東堂に促されるまま座ると、東堂も出て行ってしまった。
黒田に聞いてみようか、そう思って携帯を取り出すと今度は福富が入ってきた。
福富は小鳥遊を見て一瞬驚いたような顔をして、荒北と小鳥遊を見比べていた。
それでも何かを理解したのか、一度ゆっくりと頷くと親指を立てている。
さっぱり理解できない小鳥遊は首をかしげたが、福富は持参したベプシを冷蔵庫に入れるとそのまま出て行ってしまった。
待てど暮らせど誰もこず、また荒北が起きる様子がないので小鳥遊は黒田にメールを打った。

”今荒北先輩の部屋で座って待ってるんだけどこれどうしたらいいの?”

その返事は早く、そして一方的な物だった。

”そのまま待ってればいい。俺今から部活だから。”

黒田が部活ということは荒北も部活なのではないかと不安になったが、それならば目覚ましなり何かセットしてあるはずだ。
それを信じて、小鳥遊は荒北が起きるのをひたすら待っていたのだった。




****************************************
荒北先輩にの為に色々画策した悪い子たちのお話。
福富先輩と小鳥遊さんは騙された、という荒北の予想は見事命中したようです。
三人はあとでギッチギチに絞められてると思います。
でも懲りないのが三人の良い所、ですよね……?



story.top
Top




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -