盲目 -中編-



次の日、駅に行くと5分前だというのに新開くんは待ってくれていた。

「ご、こめん!待たせちゃった!」
「まだ5分前だぜ、大丈夫だ。」

そう言ってにっこり笑う新開くんは、ごく自然に手をつないできた。
あれ…?
なんだか違和感を覚えながらも、振り払うことができずに歩き出した。
少し早めの昼食を兼ねてバイキングに入った。
前から知ってはいたけど、新開くんはすごく食べる。
山盛りだったお皿が、みるみる空になって行くその姿は圧巻だった。

「雛美ちゃんもう食べないのか?少食だな。」

そう言って笑う新開くんは、いつもの新開くんでホッとする。
結局時間ギリギリまで食べ続けた新開くんはかなり目立っていて、手を繋いで店を出るのが少し恥ずかしかった。




「雛美ちゃん、ごちそうさま。」
「いえいえ、いつものお礼だから。ていうか、新開くん本当にたくさん食べるねー。バイキングで正解だったかも。」

少し歩いて、近くの公園についた。
土曜の午後だからか、ベンチはほぼ埋まってたけど一つだけ誰もいないベンチがあった。

「ねぇ、日陰じゃないのが残念だけど座らない?」
「オーケー、何か飲むもの買ってくるよ。雛美ちゃんは待ってて。」

新開くんのお言葉に甘えて、ベンチに座った。
少し風は強いけど、日差しと合わさるとちょうどいい。
日陰じゃなくて良かったな、そう思っていると、ベルの音がした。
時計を見ると、2時になった所だった。

「雛美ちゃん!」

少し離れたところから、新開くんが慌てて走ってくる。
何事だろうと立ち上がった瞬間に、この場所が空いていた意味を理解した。
プシューという音とともに、足元から水が飛び出す。
ここは、水のオブジェのど真ん中だったのだ。
私は頭から水をかぶり、ずぶ濡れになってしまった。

「大丈夫か!?」
「う、つ、冷たい…。」

新開くんが上着を脱いでかけてくれた。
先ほどまでは心地よかったはずの風が、今では私に猛威を振るう。
風が吹くたびに震えてしまう。
そんな私を見兼ねたのか、新開くんに抱きしめられた。

「新開くんが濡れちゃうっ。」
「そんなことはどうだっていいさ。とりあえずどこかで乾かそう。」

少し歩いて探したけど、こんなにびしょ濡れで服を乾かせる場所なんてそう多くはない。
いきついたのはホテル街。
新開くんは申し訳なさそうに、私の手を引いた。


ホテルに入ると、順番にシャワーを浴びた。
ドライヤーで服を乾かしていると、後ろから抱きしめられた。

「新開くんの服はだいぶ乾いたよ。」

そう言って振りほどこうとすると、さらに強い力で抱きしめられる。

「し、新開くん?」
「雛美……。」

耳元で囁かれたかと思ったら、正面を向かされた。
左手で抱きしめられ右手で顎を掴まれて、身動き出来ずにいると新開くんの顔が近づいてきた。

「やっ、ちょっ。んんっ。」

抵抗しても、軽々と押さえつけられてしまう。
そのまま唇を重ねられ、角度を変えて舌が入り込んでくる。
押しのけようとした両手はまとめて頭上で押さえつけられ、新開くんの右手が私の胸に触れる。

「雛美っ……。」
「や、やだ!新開くんやめて!」

荒い息遣いのまま耳や首を舐め上げられ、なんとも言えない不快感に襲われる。
新開くんが、怖い。

「そんなに靖友がいいのか?」
「えっ……?」
「俺じゃダメ?」

新開くんの手が緩んだ。
捨てられた子犬のような目をして、そんなこと言う新開くんはずるい。

「し、新開くんならもっと可愛い子が」
「雛美がいい」
「いやでも私っ」
「俺にくれよ、全部。」

そう言って今度はガウンの紐で手を縛られた。
新開くんはそのまま紐をコート用のフックに引っ掛けてしまった。
私は両手を頭上に固定されたまま身動きができない。
新開くんの手が私のガウンをはだけさせ、直接肌に触れる。

「新開くん!やめて!お願いだから!やめて!」
「隼人って呼んでくれたら考えてもいい。」
「…っ!は、隼人くん、やだぁっ。」

それでも新開くんは手を離してはくれない。
下着を剥ぎ取られ、隠すものが何も無くなってしまった。

「隼人くん、やめてくれるって言ったじゃん!」
「考える、と俺は言ったんだよ。雛美。」

また深く口づけされる。
唾液を流し込まれて、思わず噛み付いた。
鉄の味が口に広がる。

「雛美は狂暴だな。」

新開くんの唇が切れて、血がしたたっている。
それでも睨み続けると、新開くんは脱ぎ散らかしたジーンズから携帯を取り出した。
まさか……。

「やだ、新開くんやめて!お願い!」
「隼人。」
「は、隼人、くん、おねが…」

カシャっ
嫌な機械音がした。
新開くんの携帯のレンズは、明らかに私を捉えている。

「やだ!撮らないで!お願いだから!」
「雛美がいい子に出来たらな。」
「いい子にする、だから……。」

涙が頬を伝う。
新開くんはそれを舐めとり、ニヤリと笑う。
胸をやわやわと揉み、時折その先端に触れる。
その度に私は体をよじるのに、手を拘束されているせいで逃げることは叶わない。
先端に口付けられたかと思ったら、手は下肢へ伸びていた。

「やぁ…はや、とく…やだっ。」
「いい子にするんじゃなかったのか?」

どう足掻いても逃げることはできない、そう思った。
私を見上げる、熱を帯びたその目は酷く美しく見えた。
こんなにも綺麗な人が、なんで私なんか。
そう思うと涙が溢れてくる。
それに気づいた新開くんは、私の両足を持ち上げて開いた。
そしてその中心へと顔をうずめる。

「や、待って、お願い!」

その静止も聞かず、新開くんは私のそこに口付ける。
舌で割り開き、花芯を執拗に刺激されて体に痺れが走る。

「やぁっ、んっ…あっ。」
「随分素直になったな。」

新開くんの吐息が敏感になったそこに当たり、ゾワゾワした。
漏れる声を抑えようと下唇を噛み締めていたせいで、また鉄の味がする。
新開くんは私の足を離して立ち上がった。
だけど私の足はもう自分を支えることすら出来ない。
フックがギシリと鈍い音を立てる。

「フックが壊れちまうな。」

そう言って笑うと、また深く口付けられる。
息をしようと口を開ければ、舌が滑り込んできて口内を舐めまわされる。
そしてそのまま抱きかかえられ、ベッドへと運ばれた。

「抵抗、しない方がいいぜ。」

そう言って携帯をちらつかせる。

「わかって、る……。」
「いい子だ。」

満足そうに微笑むと、今度は優しくキスされた。
啄ばむようなキスを繰り返すうちに、新開くんの指が私の中に入ってきた。

「いっ……。」
「キツいな、初めてか?」

痛みと異物感で、また涙が溢れる。
それでもお構いなしに、新開くんは私の中を弄った。

「いたいっ…やっ……。」

指が増え、痛みが増す。
新開くんの息が荒くなって、熱くなる。
ぐにぐにと中で動いていたかと思うと、指が抜かれ花芯を押しつぶすように刺激される。
痛みより強い快感に体が跳ねたその瞬間、違うものが充てがわれ、メリメリと音を立てるかのように入り込んできた。

「かはっ……。」

あまりの圧迫感に息ができない。
もがこうにも痛みで体が動かない。

「雛美。」

名前を呼ばれて見れば、新開くんはじっと私を見ていた。
そして口元に指を持って行ったかと思えば、深呼吸を促した。

「吸って、そう、吐いて。」

ゆっくりと呼吸を整え、次第に痛みも和らいでいく。
やっと普通に息ができる、そう思って吐いた瞬間、また中に押し入ってきた。

「はっ…うっ…。」
「雛美、悪いな。まだ半分も入っちゃいねぇんだ。」

そう言いながらまた深呼吸を促す。
何度もそれを繰り返した。
落ち着いては押し込まれ、また落ち着いては押し込まれ。
もう何度目かわからなくなったとき、新開くんは大きく息を吐いた。

「キツいな、やっと入ったっていうのにもう押し出されそうだ。」

ゆるゆると腰を前後に振られ、痛みが走る。
もうどこが痛いのかわからない。
新開くんに止まって欲しくて、思わず抱きついた。

「やっ、しんか、くん、まっ……。」
「隼人。」
「は、はやとくん……。」
「せっかくいい子だったのになぁ?雛美は悪い子だな。」

そう言うと、新開くんは傍に置いてあった携帯を手に取った。
また撮られる!と思って抱きつくと、予想外の音がした。

プルルルルッ

それはコール音。
ディスプレイには荒北靖友の文字。
血の気が引いて行く。

「靖友には今日、雛美とデートだって言ってあるんだ。さっきからちょいちょい雛美の携帯が鳴ってんの、靖友じゃねぇかな。」

何度目かのコールで、その音がやむ。
そして代わりに、愛しいあの声が響いた。

「アァ?お前今小鳥遊と一緒じゃねェのかよ!」

はっきりと声が聞こえるのは、スピーカーモードのせいだろう。
新開くんはクスクスと笑って、私を見ている。

「あぁ、一緒にいる。雛美の私服、可愛かったぞ。」
「ハァ?お前いつから呼び捨てで呼ぶような仲になったンだよ!」
「今日から、かな。なぁ、雛美?」

そう言ってにっこりと笑う。
どう反応しろというのだろうか。
私が何も言えずにいると、何も知らない荒北くんは話を続けた。

「小鳥遊困らせてんじゃねェよ、ボケナス!つーかお前そんだけのために電話してきたのかよ!」
「いや、まぁ、そんなとこだ。」

そう言うと新開くんは私を押し倒し、また動き始める。

「やっ、待って!あっ…ふぁ…。」

意地悪そうに笑ったまま、新開くんは携帯をこちらに向ける。

「靖友に、雛美のエッチな声聞こえるよ?」

耳元で囁かれて、慌てて口を押さえた。
それに機嫌をよくしたのか、動きはさらに激しくなる。
電話口からは、相変わらず荒北くんの声がした。

「オィ新開!用がねェならもう切んぞ!ちゃんと送ってこいよ!」
「あぁ、じゃぁまたあとでな。」

そう言って通話が切れた。
新開くんは携帯を投げ捨てると、花芯を刺激し始めた。

「あっ、それ……変になっ、んんっ。」
「雛美、靖友の声で感じたのか?中がぐちょぐちょだぜ。」

そう言ってわざと音が聞こえるように、腰を大きく打ち付けた。
花芯への刺激のせいか、痛みよりも痺れに近い快感に襲われる。
結合部が見えるように抱きかかえられ、先ほどより深く突き刺さる。

「奥当たってんのわかる?すげー気持ちいい。」

グリグリと花芯を押され、上下に揺らされ、もう何も考えられない。
ただ新開くんの声だけが頭に響く。

「雛美っ、雛美っ…。」

ひときわ大きく揺らされたかと思うと、強く抱きしめられた。
私は頬に伝うのがなんの涙かもわからずに、意識を手放した。



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