あなたと甘い口づけを




ファーストキスはレモン味なんて、だれが言ったんだろう。
私のファーストキスは、キャラメル味だった。
隼人とのキスは、いつも何かの味がする。
林檎だったり、苺だったり、ミルクだったり。
いつも何かを食べているせいか、甘い匂いをまとった彼はその香りにふさわしく優しく微笑むのだった。




最近ハマっているキャンディは、少し小ぶりの黒と白の二種類入りだ。
私はビターココアの黒が好き、隼人はハニーミルクの白が好きで、いつも買ってすぐにわけっこしていた。
今日も授業の合間にココアキャンディを口に放り込むと、クラスメイトに驚かれた。

「雛美ちゃん、ココアの方だけで食べてるの?」
「うん、ミルクの方は甘すぎるから食べられなくて。」
「あれ、二つ一緒に食べるとすごく美味しいんだよ!ココアの風味の中にほのかな甘さが広がって、でもしつこくなくて。」

だから二つとも同じ個数だけ入ってるんだよ、と言われて思い当たるふしがある。
確かにいつもちょうど半分で分けっこしていた。
興奮気味に話すクラスメイトに影響されて、少し食べてみたくなる。
甘すぎない、って言ってたよね。
あとで隼人にもらいにいこう。





昼休みは委員会があり、結局隼人に会いに行けたのは放課後だった。
こういう時クラスが遠いと不便だなぁと思いながら歩いていると、東堂くんに肩をたたかれた。

「雛美ちゃんではないか。ここにいるということは、新開を探しているのかね?」
「うん、ちょっとお菓子分けてほしくてね。」
「新開ならうさ吉の所へ寄ってから部活にくると言っていたぞ。恐らくクラスにはもういまい。」

親切に教えてくれた東堂くんにお礼を言うと、私はうさ吉の小屋へと急いだ。
早くしないとまた入れ違いになるかもしれない。
うさ吉の小屋につくと、隼人の姿があった。
丁度出る所のようで、走って正解だったなと思う。

「隼人。」
「雛美か、うさ吉に会いに来たのか?」
「ううん、隼人に会いにきたの。」

そう言うと優しく微笑んで、抱きしめられる。
隼人からはハニーミルクの匂いがして、用件を思い出す。

「あのね、隼人にあげたミルクのキャンディ1個欲しいんだけど。」
「朝もらったやつか?悪ィな、今最後の1個食っちまった。」

そう言って隼人は口を開けた。
白いキャンディがちょこんと舌に乗っかっている。
いいこと、思いついた。
私は口にココアキャンディを放りこんだ。

「隼人、ちょっと屈んで。」
「こうか?」

目線を合わせてくれた隼人の両頬に手を添えて、自分の方へぐっと近づけた。
ふっくらとした柔らかい唇が、私のそれと重なる。
そっと舌を入れて、隼人の中からキャンディを抜き取って離れる。
驚いた隼人は少し顔が赤かった。

「雛美、今何を……。」
「このキャンディね、二つ一緒に食べると凄くおいしいって聞いたから。」

コロコロと口の中で転がすと二つのキャンディが溶けて混ざり合い、確かにとてもおいしい。
これなら私も食べられる甘さで、蜂蜜の風味がとてもいい。

「うん、これやっぱり二つ一緒の方が美味しいかも。今度は隼人にもココアあげるね。」
「いや、今くれよ。」

そう言って顎を持ち上げられ、また唇が重なった。
少し肉厚で柔らかい舌が入ってきて、今度は私のキャンディを奪っていった。

「な、隼人!」
「雛美が先にしたんだろ?……確かにこれは美味いな。」

嬉しそうにキャンディを食べる隼人を見て、何も言う気がなくなる。
こんなに幸せそうに食べるなら別にいいか、と思ってしまうあたり私も相当重症だと思う。
口に残った甘い香りが、さっきの隼人の香りを思い出させる。
ねぇ隼人。私は今、隼人と同じ香りになってるのかな。





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3月10日、砂糖の日ということで甘いお話でした。


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