見つめて触れてキスをして




私にはつい最近彼氏ができた。
ファーストフード店でバイトをしていた時に声をかけてくれた雪くんが4つも年下だと知ったのは付き合ってからだった。
サラサラの銀髪に猫のような澄んだ瞳が可愛くて、白い肌が紅潮している様はとても妖艶に見えた。
"部活で忙しいから"
と言いつつも私がシフトの日は必ず終わり際にきて送ってくれる。
そんなところが頼もしくもあり、何だか恥ずかしくもあった。
今まであまり付き合った経験はなく、まして男勝りな性格からか優しく気遣われたことなんてない。
そんな私に優しくしてくれる彼を、私は少し疑っていた。
そして今日も雪くんは私を迎えに来た。

「お疲れ様。」
「ん、ありがと。」

当たり前のように差し出された手を取れば、雪くんの頬は少しピンクに染まる。
それが可愛くてついじっと見つめてしまう。
その視線に気づいたのか、私をちらりと見ると雪くんは不思議そうに首を傾げた。

「どうかしたんすか?」
「んーん、何でもないよ。」
「俺の顔になんかついてます?」

そう言って口元を触ったあたり、来る前に何か食べてきたんだろうな。
そりゃそうか、こんな時間だもん。
夜に出歩かせてしまっていることに少し罪悪感を感じていると、雪くんは優しく微笑んだ。

「まぁいいや。さ、帰りましょう?」
「うんっ。」

優しく手を引かれて私は歩き出した。
可愛くて優しくて、私にはもったいないくらいの彼氏だけど。
一体私のどこが良かったんだろう。
ふと浮かんだ疑問は消えることなく私の中に留まって大きくなるばかりだ。
今日もそんなことを考えていると、雪くんが立ち止まった。

「あれ?どうしたの?」
「……俺といるの、そんなにつまんないっすか。」
「え?」
「最近、いつもそうですよね。何か話してても半分上の空っていうか……から返事っていうか。」

突然の指摘に心臓がぎゅっと痛んだ。
蔑ろにしているつもりはなかった。
だけど雪くんからすれば私の考えていることなんてわからない。
怒って当然だった。

「ご、ごめん。そうじゃないんだよ、ただ……。」
「ただ、なんすか。」
「雪くんがさ、なんで私なんかを選んでくれたのかなって考えちゃって。ほら、私こんなじゃん?スカートとかはかないし、化粧もそんなにしないし……可愛い方じゃないからさ。」

私の言葉に、雪くんはため息をついた。
さらに怒らせたのかと思いそっと見上げると、呆れたような目が私を見据えていた。

「そんな下らないこと考えてたんすか。」
「え、あ、うん……。」
「俺といる間ずっと?」
「うん……。」
「……バカなんすか?」
「へっ?いや、確かにバカだけどさぁ……」

思っても見なかった言葉に涙目になる。
そんな私の顎を持ち上げると、雪くんは真剣な目で私を見た。

「好きって、見た目だけじゃないだろ。俺が好きなだけじゃダメなわけ?」
「えっ……。」
「どこが、とかじゃねぇし。雛美さんだから全部好きじゃ納得してくれねぇの?」

だんだん悲しそうになっていく表情に胸が苦しくなった。
私はなんて下らないことで悩んでたんだろう。
そんな小さなことで、こんなにも悲しませてしまうなんて。

「変なこと考えててごめんね。」
「……好きっす。」
「うん。私も好きだよ。」
「ホントに?」
「嘘ついてどうするの?」
「じゃぁ、キスしていいですか」

そっと瞳を閉じながら近づいてきた顔は、月明かりに照らされてとても綺麗だ。
それに応えるようにそっと瞳を閉じれば、柔らかな感触が私の胸を高鳴らせた。
雪くんとの初めてのキスは、優しい匂いがした。
自信がない私を包み込むような雪くん。
いつか雪くんみたいに、自信がもてますように。


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