優しさのかけら




昔から小さかった背は、高校に入る前に147センチでぴったりと止まってしまった。
私の両親は150センチ台、お兄ちゃんは160ギリギリでお姉ちゃんに至っては145センチという小さい家系のサラブレッドだ。
親戚にだって大きな人はいなかった。
そのせいか背が高い人は苦手だった。
特にそう、銅橋くんみたいな大きな人は。



入学式で見かけた時から、なんだか怖いと感じていた。
背は高くガタイが良くて、声も大きい彼はよく目立った。
荒々しく威圧的に感じる雰囲気も苦手だ。
出来れば関わりたくない、そう思っていたはずなのに同じクラスで彼の席が私の後ろだったと知った時は血の気が引いた。
できるだけ後ろを向かないよう、刺激しないように細心の注意を払って生活した。
銅橋くんが後ろにいる時はなんだか落ち着かなくて、体育や移動教室で席が離れるのが待ち遠しかった。
そんなある日、珍しく銅橋くんがいない日があった。
今日は心穏やかに過ごせそうだ。
そう思ってぼんやり歩いていたせいで、ドンッと誰かにぶつかった。
勢いをつけていたつもりはなかったけど、私は尻餅をついてしまった。

「あ、ごめんなさい!」
「大丈夫か?」

スッと伸びてきた手は大きくて、ふと見上げるとそこにはいるはずのない銅橋くんがいた。
私は驚いて小さな悲鳴を上げてしまった。

「ヒッ……あ、大丈夫です。すみませんっ。」
「……そんなに怯えんなよ。取って食ったりしねぇから。」

銅橋くんは頭を乱暴に掻くと、私の前にしゃがみ込んだ。
初めてしっかりと見るその表情は眉が下がり、困っているように見える。

「あ、ご、ごめんなさい……。」
「あのよぉ、俺が苦手なのはわかってるけどな。そこまで明からさまだと結構きついんだよ。」

苦笑した銅橋くんは私の手を掴むと立ち上がらせてくれた。
銅橋くんの腕はとても優しくて、それでいて力強くて。
立ち上がればその身長差にまた怯んでしまったけど、怖いだけじゃないのが今ならわかる。

「えっと、ごめんね。私、大きい人苦手で……」
「俺だけじゃねぇのか?」
「うん、本当にごめんね。ほら、私小さいから大きい人に免疫がなくて。」

その言葉にホッとしたのか、銅橋くんは大きく息を吐いた。
そしてとても嬉しそうに笑った。

「なんだよ、そんなことかよ。何かしちまったんだと思ってたのによぉ。」

私は銅橋くんの何を見ていたんだろう。
今だって怖くないわけじゃない、でも違う何かが確実にそこにあった。
初めて銅橋くんがかっこ良く見えて、なんだか胸がドキドキと煩い。
ねぇ銅橋くん、あなたの事をもっと知りたいと言ったら話をしてくれますか。
私に銅橋くんのことを教えてくれますか。
今私の中には、あなたへの興味が溢れています。
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