誕生日パーティ




5月18日は燐の誕生日。この日はESでの誕生日会が盛大に行われていた。クレビのメンバーやあんずちゃんたちが急か急かと準備に取り掛かっていているのを横目に仕事を、早く終わらせることに専念したのも数時間前のこと。

みんなからはぜひ参加してほしいと言われていたけれど、あたしと燐の関係性を知る人の方が少なくて、行ったところでどんなふうに接するべきか悩んでしまう。だからといって誕生日をお祝いしないつもりではないし、なんなら誕生日会が終わった後にあたしと2人だけの誕生日をお祝いするつもりなのだから。だからこそ、行かなくても良いのでは…という考えに辿り着いてしまう。


こっそりと会場内を覗けば、色鮮やかに飾られた部屋、色々な料理が置いてあるが時間も経っている事もあり、料理はだいぶ少なくなっていた。誕生日ケーキだって切り分けられていて、だいたいの催しらしい流れは終わった事が見て取れる。コズプロの人たちはもちろんのこと、燐と同じサークルであたしと同じ事務所の宙くんの姿もあった。あそび部、だっけ。たまに話は聞くけど、楽しそうなメンバーでちょっとだけ羨ましいなって思ったりもする。


「…はぁ」


誕生日プレゼントは持ってきてない。この後もあるし、と思ってだからと言って手ぶらも嫌で、とりあえず調達してきたお酒は持ってるけど…って感じでどうしようと悩んでいたら、突然後ろから誰かにポンと叩かれてびくりと体が震えた。


「優希さんこんにちは!」
「優希さんも天城先輩のお祝いに来たんですね」
「燐音先輩なら奥にいますよ〜!」


振り向いていたのはひなたくんとゆうたくん。人懐っこい2人とは、たくさん顔を合わせるわけではないけれど、いつだって気軽に声をかけてくれる。


「あー、うん…」
「優希さん入らないんですか?」


あからさまに歯切れが悪過ぎたかな、ゆうたくんが不思議そうな表情で見つめてくるから、どうしようかと思いを巡らせていれば、突然背中を押されて驚いた。その勢いのまま足は必然的に数歩押し出されて部屋の中へと入る形に。



「アニキ…!危ないだろ?!」
「優希さんせっかく来たんだし入っちゃお〜」



後ろで驚きの声を上げたのはゆうたくんの方だった。まず、ゆうたくんはこんなことしないだろうし、ひなたくんの楽しそうな声も耳に入ってくる。驚きはしたものの、躓くわけでも転びそうだったわけでもなかったので、大丈夫だよと声をかける。


「姉さん!!!」
「ひーくん、おつかれさま」


中に入ってまずあたしに気づいてくれたのは、ひーくんだった。そっか、ひーくんも来てたのかと思っていれば、しっぽがついていたら絶対大きく横に振ってるだろうなという感じで駆け寄ってきてくれる。嬉しさ反面、大声で呼ばれて若干視線を集めたようで恥ずかしさもあったりしつつ。ひーくんは、いつものように「おつかれさまだよ!」と言いながら挨拶代わりのハグをしてくれる。


「姉さん、来ないのかと思ってたよ」
「仕事があったから遅くなっちゃったの」
「ウム、姉さんも来てくれて嬉しいよ!」
「いや、そのセリフは俺っちが言うべきっしょ」



気づけば後ろには燐もいて、呆れた様子で立っていた。言われた言葉は、確かに…とあたしも思うけど、これがひーくんらしさだから仕方ない。


「わざわざ来てくれたんだな」
「うん、せっかくだしね。はい、おめでとう」
「ありがとうな。おっ、酒っしょ〜」



手に持っていたお土産のようなプレゼント(仮)のようなお酒を手渡せば、嬉しそうにしてくれてホッとする。やっぱり買っておいてよかった。なーんて思っていれば、突然燐の顔が急接近してきて、



「あとは部屋でゆっくりな」



と耳元で囁かれてあからさまにフリーズしてしまう。気づけば、さっきまでと同じ距離に戻ってはいたけれど、ニヤッと笑う燐は確信犯的だった。燐は知らないけど、あたしとしてはこの後が本番だからこそ、その事を思い描いて一気に顔は熱が集中するのがわかった。


「そんな残りの時間もねェけど、楽しめなァ」


頭をポンポンとされて燐はまた別のところへ。他人の目も気にしての他所行きの対応の中に燐の優しさが感じられて胸が熱くなる。


その気持ちを落ち着かせるよに周りを改めて見て思ったのは、燐のために集まってくれた人たちがこんなにもいてくれたこと。燐は本当に嬉しそうな表情をしていて、故郷にいた頃にはあんまり見れなかった嬉しそうな楽しそうな表情。そんな燐を見ることができたのが、あたしにとっても歓ばしいことである。


(燐音くんはぴば!2021.05.18)

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