復活祭



イースター

別名:復活祭

イエス・キリストが亡くなった後、3日後に復活したことをお祝いする祭り。イースターといえば、イースターエッグ、イースターバニーのイメージが強い。

だからといって、キリスト教でもなければ、イースターに何か思い入れがあるわけでもないのだけれど。



「っう〜」
「…姉さん大丈夫…?」
「ん、うん、大丈夫」


ポロポロと目から溢れる涙が止められず、強く目を閉じていたら、横から心配そうなひーくんの声が耳に入る。大丈夫だよ、と答えるが気づけばひーくんが両手を頬に添えてじっと覗き込んでくる。溢れた涙を優しく拭ってくれるが、本当に申し訳ないことにこの涙は自分の意思ではないので止められない。



「おい、一彩。何やってンだ」
「兄さん!姉さんがずっと泣いてるんだよ!」
「ァア?」
「もう、玉ねぎ切ってるだけだから…!」



全く、二人が揃うと何かと大ごとになるので、こんな風に止める機会が増えた気がする。昔はこんなことなかったんだけどなぁ…と思いつつ、切りかけの玉ねぎを全て包丁でみじん切りにした。


「姉さん、混ぜたよ!」
「はい、ありがとう」


気づけば燐は冷蔵庫から缶ビールを一本取り出して、リビングに行ってしまった。茶色い液体の入ったボウルを見せてくれるひーくんにお礼を言って、次の作業をお願いする。

今日は元々二人と一緒にご飯を食べる約束をしていたのだが、どうするかを話していくうちに、いつものように家でご飯という話になった。ひーくんもお手伝いしてくれる、ということであたしの指示のもと、先ほどから色々と動いてくれる。


「あとはしばらく炒めるだけだから、ひーくんも燐のところ行ってていいよ」
「また何かあったら呼んでほしいな」
「うん、その時は呼ぶね」


下準備を終えて、ひーくんに一旦休憩を告げれば、ビールを呑みながらテレビを見ている燐の元へ足を運んだ。さて、ここからしばらくは地味な作業の開始だ。













あれから、ほぼほぼ炒めるだけの工程を繰り返し、仕上げまでもう少しとなった。味見をして、良さそうだなと思うがやはり他人の意見も知りたくなるもので、先程の言葉の通り、ひーくんを呼べばすぐにやってきてくれる。


「はい、ひーくん。あーん」


スプーンで掬ったそれを口元に差し出せば、言われるがまま口を開けてパクリ。口の端についたものもペロリと舐めて「ウム!美味しい!」と言ってくれたのでホッとする。


「優希、俺には?」
「もう、出来上がるから燐は後でいいでしょ」


気づけばテレビを見ていたはずの燐もすぐ後ろに来ていて、少し羨ましそうな声が上から降ってくる。ちゃっかりお腹に手を回して動けないため、「危ないから、ね」と言いながら手を離すように促せば最も簡単に解けた。


「じゃあ、できたから食べよう」
「オムライス!」
「ハンバーグもあるじゃん、めちゃくちゃ作ったなァ」
「だって、食べ盛りでしょう?」


そう、先ほどから作っていたのはハンバーグにオムライス。赤ワインなどを使ってデミグラスソースも作ってみた。あとは、サイドにトマトやオリーブの入ったレタスサラダもテーブルに並べて。

出来上がった料理をキラキラした目で眺めるひーくんに、内心嬉しそうな燐の表情にこちらまで自然と表情は綻ぶ。


「何作ろうかな、って思ったんだけど。イースターエッグ見て、そういえばひーくんがオムライス好きだったなあって思って決めたの」
「イースターエッグってなんだい?」
「復活祭の卵だよ、普通に卵に色をつけたものもあれば、卵の形をしたチョコもあるみたいだな」
「ふむ、どんな理由があるんだろう?」
「お祝いの飾り付けとして使うんだって」


里にいた頃は、何をするにしてもよく二人と一緒にいれる時、ワイワイやっていたのが懐かしくなる。里にいた頃も、ひーくんは何でも不思議に思っては燐に尋ねて、ひーくんの疑問に燐が答えていた。その頃を思い出して、また自然と懐かしさで表情が緩む。

数年前、自分だって知らなかったことを今ではこうやって教えることができるようになった。けど、まだまだあたしだって知らないことや見たことないことがたくさんある。


「姉さん、美味しいよ!」
「優希はホント上手だよなァ」
「喜んでもらえて何より」


二人に喜んでもらえるのが嬉しくて、大変なことだって乗り越えられる。ひーくんにはこれからもお姉ちゃんでありたいし、燐の横で支える嫁として、ひっそりと頑張りたいなと思った。

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